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(フレンチ)シェ・イノ

京橋「シェ・イノ」 ☆☆☆

「フランス料理におけるソースとは、料理そのものである」と言われている。東京フレンチの中で「ソースづくりの名人」と称されている井上旭氏が、オーナー兼シェフを務める京橋にある「シェ・イノ」を訪問してみた。

井上氏の経歴は二十一歳にて渡欧され、七年間もの間、フランスの「トロワグロ」や「マキシム」など名だたるレストランで修行されて二十七歳の時に帰国されている。その後に銀座『レカン』の総料理長などを経て、三十四歳の時に街場のフレンチレストランのシェフとして独立されている。

フランス「マキシム」に於いてソーシエ(ソース担当)を任せられていたことからも、その技量は卓越したものだと推察できる。また帰国後に、帝国ホテルのフレンチレストランで、力量より劣る箇所に配置されたと僅か四日間で、帝国ホテルを辞職された逸話など、誠に己の仕事に誇りを持った料理人である。大樹に寄らず小さくとも一国一城の主たる生き様は、其の頃から養われていたのだと思う。

そしてジョエル・ロブションに代表される最近のヌーベルキュイジーヌ(素材を生かし濃厚な味付けを控え、量も少なくする。) を真っ向から批判して、古典的な正統派といわれるフランス料理を継承する料理人である。

平成十四年十二月に移転したという店は、落ち着いた天然木を基調としており、ダインニングの天井高も高く贅沢な居心地の良い雰囲気を醸し出している。ホールのキャパシティーは六十席ほどであろうか。

アペリティフはシャンパン(二千八百円)を貰う。ここの晩のコースは一万三千円、一万五千円などがあるが、メートルと相談して本日は、この店の定番料理などをアラカルトでお願いすることにした。ワインはソムリエに赤白グラス(二千円)でお任せした。

本日供された料理は、つぎのとおりだ。

     アミューズ「カリフラワーのムース」

     前菜「オマール海老のカブ包み」(五千円)

(薄切りされた蕪に、トリフ、半生のオマール海老、トマト、アボガドなどがサンドされている。グレープフルーツの甘酸っぱいソースと素材との相性が抜群の一皿だ。美味い。)

③魚料理「ブイヤベース」(一皿をシェアしてもらう。五千四百円)

(甲殻類などの出汁が効いた濃密な海鮮スープである。その具は白身魚、オマール海老、貝柱など。正に黄金のスープと呼ぶに相応しい味わいであった。)

④肉料理「仔羊のパイ包み焼き マリア・カラス」(七千円)

(この店の三十年来のスペシャリテである。仔羊の背肉に、フォアグラ、トリフ、マッシュルームなどのピューレを詰めて焼き上げてある。濃厚で芳醇なソースで食べる。赤ワインと合わせるとその美味さが増していくようだ。)

⑤ワゴンデザート(千六百円)

(ショートケーキ、アロエのシロップ煮、パイナップルのタルトタタンの三種を貰う。)

⑥コーヒー(八百円)

料理全体の印象は、「ソースづくりの名人」の店に相応しく、供された料理はどれも美味しくは感じられたが、特に感動するような逸品の料理はなかったように思う。濃密で芳醇なソースと料理は、私には食後重いかなという感は否めなかった。

ここのスタッフのサービスレベルは高く、誠に快適な時が過せたと思う。当日の晩は、店内は殆ど満席の状態であり盛況である。そして居合わせた客達は、殆どの方が静かに料理を楽しまれているようであった。客達は、供されたソースの味を通じ井上シェフの稀有なる底力を感じていたに違いない。

YOSHI爺

ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/

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