(広東料理)ヘイフンテラス
「ヘイフンテラス」 ☆☆☆☆
十年以上も前、プライベートで香港を度々訪れていた時期がある。1928年に建造され「東洋の貴婦人」と呼ばれた「ザ・ペニンシュラ香港」を当初の宿にしていた。何回か利用するうちに私はそのホテルに、どこか日本人を蔑視しているような居心地の悪さを感じ、やがて同じカオルーンにある「リージェント香港」に定宿を移した。それが私のペニンシュラホテルへの印象である。
2007年9月、有楽町に「ザ・ペニンシュラ東京」が開業し、その二階に広東料理店「ヘイフンテラス」がオープンされた。二ヶ月の時が過ぎて、喧騒も大分治まったであろう十一月の中旬に「ヘイフンテラス」を訪問してみた。このレストランの料理長は、ペニンシュラ香港「スプリングムーン」の総料理長や香港「聘珍楼」副社長を務められたという。
東京メトロ日比谷線の日比谷駅からザ・ペニンシュラ東京までは直接通じており、地下一階からホテルのエレベーターに乗った。二階ホールで降りると、どっしりとした石造りの玄関が見える。エントランスを抜けたモダンなダイニイングは、中国蘇州の古典庭園をモチーフにデザインされ、ダークブラウンを基調とした配色やアンティークな中国家具など、古き良き中国のイメージが醸し出されていた。天井から幾つも吊るされた装飾の鳥籠が印象的である。日比谷の街が望める窓際のテーブル席へと案内された。
ここのディナーコースは一万四千八百八十円と一万八千八百八十円の二コースがあり、あとはアラカルトとなる。連れと相談してデラックスメニュー(一万八千八百八十円)を注文した。突き出しの「胡桃の飴がけ」を摘み、青島ビール(千二百円)で喉を潤しながら料理を待った。サービス担当の中国人は物腰の丁寧な愛想の良い男性チーフである。酒は紹興酒(古越龍山国宴加飯酒十年、六千八百八十円)を常温にて貰った。
本日供された料理はつぎのとおりだ。
「シェフ特製ふかひれの姿煮込みブラウンソース 金華ハムの香り」
慇懃無礼な、責任者とおぼしき黒服の中国人により配膳される。フカヒレは宮城県気仙沼産のヨシキリ鮫で、小皿の黄ニラやモヤシ、金華ハムは好みで入れて味わう。添えられた赤酢を垂らすと風味がますます円やかとなる。大変美味しく感じられた。
「真ハタとキノコのあっさり炒め」
白マイタケやエリンギなどの茸と炒められたマハタは塩で下味を利かせてある。料理の味付けは良いが、大型であろう白身からは細やかな風味は感じられない。他にアスパラ、人参、長葱などが入る。
「特製鮑のオイスター煮込み」
中国白菜が添えられた、柔らかな小ぶり鮑の煮込みである。
「和牛ヒレ肉の炒め、ブラックペッパーハニーソース」
件(くだん)の黒服が「これは青森の牛で、神戸牛や三田牛など沢山ある牛肉とは違うね。」と説明していった。倉石牛と思われるヒレ肉の炒めは、話のとおり美味な逸品である。
「四川風担担麺」
かの『龍天門』の担担麺の風味には及ばないが、胡麻をベースに胡桃も入った優しい味わいの担担麺である。
「燕の巣入りココナッツミルク」
温かいデザートで美味い。
料理全体の印象はコースのボリュームは少なめであると感じたが、供された料理は私の口に合い、どれも滋味に富んだものに思える。最近訪れた三店のホテル中華レストラン(『チャイナブルー』、『センス』)の中では一番美味しいと感じた。
サービスレベルは取柄も過誤もないものだが、ホールスタッフの数名からは、いまだ教育が行き届いていないのか、勘違いしているような気位の高さが感じられた。
中国人チーフに食後のお茶を所望すると無いとのことで、「お茶は出した方が良い。」と進言した。暫くすると、ポットの茶を供して「今度の会議で提案してみます。」と笑顔で話された。礼を言いながら心の中で彼の出世を願った。
ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/
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