(フレンチ)キュイジーヌ[S]ミッシェル・トロワグロ

「キュイジーヌ[S]ミッシェル・トロワグロ」☆☆☆☆☆

年の瀬は営業しているレストランも限られ、目当ての店の予約がなかなか取れない。連れの誕生日は、彼女が希望するフランス料理店で食事をするのが二人の決めごとになっている。昨年は『トゥールダルジャン』、一昨年は『シェ松尾 松濤レストラン』で誕生日を静かに祝った。

十二月三十日の夕刻、ターミナルの新宿駅からタクシーを拾い、ハイアットリージェンシー東京へと向かった。一年半ほど前に、このホテル一階にある中華料理店『翡翠宮』に伺ったことがある。その料理はレビューを憚ったほど塩垂れるものであったが、手入れの行き届かないショッピングアーケードと、草臥れたタイルカーペットに付いた漏水の滲は記憶に残っている。目指す「ミシュランガイド東京版」掲載レストランも同じ一階にあるという。

代り映えもしない通路を抜けて「キュイジーヌ[S]ミッシェル・トロワグロ」を訪問した。笑顔で迎えられた扉奥のエントランスからは、大硝子で仕切られた厨房を望むことができる。そこには十名ほどの若い調理人達が甲斐甲斐しく立ち働いておられたが、見渡したホール全体の第一印象はチープなものに感じられた。

連れと二人案内されたのは一番奥の壁際のテーブルである。席に着くとレストランの印象はがらりと変わった。天然木のテーブルと媚茶や狐色など茶系をベースにした配色は、紗をかけた淡い照明の光と相俟って静かに落ち着いた趣がある。高い天井に凛と架けられた太梁は福井の古民家から移築されたものだ。

まず私はシャンパン(二千二百円)を、連れはミモザ(千八百円)を貰って乾杯する。このレストランのディナーコースは一万四千七百円と一万八千九百円があり、あとはアラカルトとなる。本日は一万八千九百円のコースを予約しておいた。「ワインはグラスで」と伝えると、熟年のソムリエは「料理に合ったワインを選んでお出し致します」と丁重に応じた。そもそも味覚とは曖昧なものであるが、この受け答え一つで料理もワインも一段と美味しく感じられてしまうのだから、サービスとは斯くも重要なものである。(参考のためにグラスワインの価格を記しておく)本日供された料理はつぎのとおりだ。

「三種のアミューズ」

冷たいアミューズで食欲を刺激する「南瓜のヴルーテ」

「フォアグラのロワイヤルミロワール ジロル茸と柚子」歯応えが良い五片のジロール茸とフォアグラのムースを鴨出汁のコンソメで味わう。注がれた貴腐ワイン(シャトークーテ 千八百円)は料理との相性が極めてよい。

 「トリュフの舌平目 ポロ葱と洋梨」微塵切りにされた黒トリュフとポロ葱や洋梨が、舌平目が纏うクリームソースに潤沢に散らされている。辛口の白ワイン(プイィ・フュイッアン 二千百円)が供された。

 「ラングスティーヌのクロカン ヘーゼルナッツとローズマリー トランペット・ド・モール」ソテーされた赤座海老に黒いトランペット茸が添えられ、ヘーゼルナッツが散らされている。風味を引きだすため海老の焼き加減は半生である。白ワイン(ジョセフドゥルーインムルソー 二千五百円)

 「自家製豆腐のラヴィオリ 黒トリュフとフォンドヴォーのソース」

 「蝦夷鹿のノワゼット ルッコラバター セモリナのノック オレンジの香り」赤ワインが注がれる(アミラル・ドゥ・ベイシュヴェル 二千円)。

 「フロマージュ」運ばれた七種類のチーズから四種類をチョイスして貴腐ワインと楽しんだ。

 「マロンとカシスのキャレッス」「エスプレッソ ダブル」

現代フランス料理を標榜するこのレストランの料理は、甘みと酸味が生かされた味わい豊かなものである。生み出された斬新なインパクトさは、私の口には合って大変美味しく感じられた。ホールスタッフのサービスレベルは、客とほどよい距離を保ちながら、気配りができた心地よいものである。

あたたかみの感じられる空間は気分をリラックスさせ、非日常の感動のひとときを過ごすことができたと思う。酔うほどに気儘になって今日の主役が連れであることを少し忘れてしまったが、ここ三年間誕生日に祝宴を張ったフランス料理店の中では最上の店である。

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(フレンチ)ペリニィヨン

「レストラン ペリニィヨン」☆☆☆☆

昨年の末に、新橋にある和食店の御主人から「フランス料理では、この店は美味しいと思いますよ。」と教えて頂いた。気にかかっていたレストランを、桃の花が盛りの四月上旬に訪問する機会に恵まれた。

銀座一丁目、ホテル西洋銀座の近くに赤テントで飾られたフレンチレストランの建物を見つけた。そこは一階では系列店の『ブラッスリー・ドン・ピエール』が営業され、二階に目的の「レストラン ペリニィヨン」がある。階段を上っていくと、すかさず笑顔のスタッフが扉を開けて出迎えてくれた。

店内はピンクとダークピンクを基調とした設えが、二十年という歳月の中で心地良く色褪せて、落ち着いた雰囲気を醸し出している。小ぢんまりとした縦長のダイニングルームは、手前と奥とで十二席ずつに分かれ、そのキャパシティーは二十四席ほどである。連れと奥にある四人掛けのテーブル席へと案内された。

ホールスタッフは客席の総数には十分であろう男性三名と女性一名の四名が担当される。突き出しのオリーブを摘み食前酒のシャンパンを舐めながら、熟年紳士のギャルソンより丁寧な料理説明を受ける。ここのディナーは八千円、一万二千円、一万五千円のコース料理とアラカルトのメニューがある。当日は一万五千円のコース料理を注文した。一万五千円のコースは、アミューズグール、オードブル二品、フォアグラのポワレ、季節のスープ、魚料理、肉料理、デザート、コーヒーなどで構成されている。ワインはギャルソンの「料理に合わせて赤白をグラスで組み合わせては如何です。」との言葉に従った。

本日供された料理は次のとおりだ。

「アミューズグール」四色のオムレツ プチトマト添え

(赤ピーマン、マッシュルーム、ポアロ葱、ホウレン草の四色のオムレツだ。野菜の旨味を巧みに引き出した繊細で手のこんだ料理である。添えられた特別に栽培されるトマトは驚くほどに甘い。白ワインを貰う。)

 「オードブル①」筍のスープ

(具は筍、浅蜊、菜の花、旬の春のスープにはトリュフも入る。)

 「オードブル②」ホワイトアスパラのソテー

(フランスから直送されたアスパラは皮を削って芯の部分が調理されている。薫製に加工された椎茸のソースとの相性も良い。)

 「フォアグラのポワレ」

(微塵切りのマンゴーの上にのったフォアグラのポワレには、ルビー色のポートワインソースが添えられる。連れのリクエストに応じて、甘みが潤沢でフルーティーなマスカットワインと合わせた。)

 「季節のスープ」コンソメスープ

 「本日の魚料理」鱸のポワレ

(桜海老が入ったソースの風味は感じられたが、鱸は期待に反して旨味に欠ける。)

 「肉料理」和牛頬肉の煮込みペリニィヨン風

(赤ワインが供される。五種類ほども用意された肉料理からは、スペシャリテの和牛頬肉の煮込みをチョイスした。三日間も煮込んだという牛頬肉は、口に含むと蕩けるように軟らかく、旨味が広がって美味い。人参、インゲン、蚕豆、グリーンアスパラ、アンティーチョークが添えられている。)

 「本日のデザート」季節限定の桜のデザート

(白玉と苺に、桜尽くしのゼリー、スープ、シャーベットなどを合わせた一品だ。)

 「ワゴンサービスのデザート」

(ブラットオレンジのゼリー、木苺のチーズケーキ、苺のシュークリーム、カスタードプリン、コーヒーのシフォンケーキの五種類のデザートがワゴンで運ばれる。勿論、全種類を美味しく頂いた。「エスプレッソダブルとプティフール」で締めとなる。)

 このレストランで供される温かなパンは一種類のみであるが、私は大変美味しく感じられた。尋ねると「レストランのフランスパン」で有名な「パンテコ」のものであるという。当日、私は四個を頂いたが、このパンが美味しいと料理に合わせて、八個を召し上がった女性客がいた話も頷ける。

 料理全体の印象は、素材に拘り、材料を生かした料理は、非常に丁寧に作られていると感じた。一皿のポーションは極めて少量にも感じたのだが、食後の満足感は十二分のものがあった。

 ホールスタッフのサービスレベルは高く、微細に行き届いたサービスを提供して頂けたと思う。このレストランは今流行りのフレンチとは違い、ゆったりと落ち着いた食事の時間が楽しめる店だと感じた。

 ただ一つ残念なことは、食事中、隣席にいた三名の老婦人達が、野卑な大声で話し続けられたことが大変に耳障りであった。どんな上流階級の御方かは存ぜぬが、傍若無人な振る舞いをする非常識な人間は、レストランで食事をする資格などないように思う。あの客達と出会わなければ、このレストランの評価は最高のものである。

ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/

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(フレンチ)トゥールダルジャン

「トゥールダルジャン」 ☆☆

 年の瀬も押し詰まってきた十二月三十日、連れの誕生日の祝いにレストランに出向いた。今日は連れの希望でホテルニューオータニにある「トゥールダルジャン」を予約してある。古典的なフランス料理は私達の嗜好に合わないことが多いのだが、ここがエスコートされたいレストランの代表格だと聞けば連れが望むのも納得できた。その格式の故か予約の時にはドレスコード(ジャケット及びネクタイ着用)を念押しされる。

 四百二十五年の歴史を有するパリ、三ツ星レストラン(現在は一ツ星)唯一の支店として、「トゥールダルジャン東京店」も開業してから二十三年の歳月が流れている。ザ・メインロビー階にあるエントランスから青絨毯を歩きウェイティングバーを経て、ダイニングルームへと案内される。エレガントと表現されているホールまでの空間は、その内装や装飾があまりにも大仰過ぎて滑稽にさえ思えた。

 ダイニングルームは、鏡張りの天上から大シャンデリアが広間を照らしだしている。ルイ王朝時代の宮殿内をイメージしたような内装は、重厚で華やかな印象ではあるが私の好みではない。ギャルソンは、『マキシム・ド・パリ東京』のように燕尾服を身に纏っており格式の高さが感じられる。

燭台の二本の蝋燭に火が灯されて夕餉の時が始まる。卓上にはクリスマス仕様のオブジェや鴨のガラス置物が飾られていた。食前酒のシャンパン(ドンペリニヨン四千二百円)を舐めながら連れと料理を相談する。年末の時期、ディナーのコース料理は一種類のみで後はアラカルトとなる。「優雅なる晩餐で2007年のエピローグを飾って」と記されたコース料理(二万五千円)を注文した。ワインはソムリエと相談し前菜にはグラスの白ワインを、フォアグラ料理はグラスの貴腐ワインを、メインの鴨料理には赤ワインのハーフボトルを貰うことにした。本日供されたコース料理はつぎのとおりである。

アミューズ「インゲンのキッシュ風タルト、サーモンとイクラのミニパイ」

「海の宝珠 鮑とフランス産トゥルトー蟹のバヴァロワ ポンポネットキャヴィア飾り」前菜に合わせ甘口の白ワインをグラス(三千二百円)で頂く。

「ブルターニュ産オマール海老のトロンソン クリーミーなリゾットと香り豊かなソースと共に」オマール海老のトロンソンとは、海老の輪切りという意味だ。この料理が一番美味しく感じられた。

「フォアグラカナーのポワレ トピナンブールのピュレと甘露なオニオンソース」貴腐ワイン(シャトーギロー1989、五千三百円)と合わせる。料理の味は平凡だが、高糖度で芳醇なワインとフォアグラ料理との相性は抜群に思えた。トピナンブールとは菊芋のこと。

「琥珀色のコンソメトルテュとヴォライユのクルネトリュフ風味」スッポンのコンソメスープは香辛料が強い凡庸な味だ。五畜の美味を兼ねると言われるスッポンの風味が台無しである。

「幼鴨のロースト セップ茸のポレンタとコンテチーズのクルスティアン アルボワ産ヴァンジョーヌソース」メインは肉料理(鴨)か魚料理(平目)の選択であったが、定番の鴨料理をチョイスした。この料理は幼鴨につけられた下味の塩加減が強すぎ、添えられたワインソースも私には塩味が濃く重過ぎるように感じた。鴨料理と辛口の赤ワイン(ニュイ・サン・ジョルジュ ハーフボトル、一万二千六百円)との相性は良い。

「若葉のサラダ白トリュフのドレッシング」

「滑らかなマンゴーのエピスチョコレートのダコワーズ」

「コーヒーと小菓子」

料理全体の印象は、供された料理には特出したものは感じられず、普通に美味しいというレベルである。慇懃無礼が見え隠れするホールスタッフのサービスレベルは、彼らが纏った燕尾服と同様に形骸化したものに感じられた。当日の客層は大声の関西弁が耳障りな五名ほどのグループ客と、私達を含めた六組ほどのカップル客であったが、土地柄か三組は同伴の客筋である。

東京を代表するグランメゾンを訪れたつもりであったが、このレストランは料理もサービスも非日常の感動を味わうのには程遠いものであった。高額な勘定に相応しい満足など殆ど感じられない料理店である。

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(フレンチ)マキシム・ド・パリ東京

「マキシム・ド・パリ東京」 ☆☆☆☆☆

 子供の頃、デパートのレストランに連れていって貰った。余所行きに着替えさせられ、母親の後から体を固くして付いて行くと、デパート内の洋食屋では何時も海老フライが運ばれた。銀の皿に盛られた料理は本当に美味しいものに思えたが、フォークの背でご飯を食べる仕草を真似て、緊張しながら少しずつ口に含んだ覚えがある。

 高学年の時、大人達の噂から「マキシム・ド・パリ」というフランス料理店の名前を知った。遥か遠くに思える響きは、小学生の私に畏怖の念を起させるに十分なものである。その噂を聞いてから四十年余りの歳月が流れた。

 十一月の連休初日に所用で銀座に出向いた。ランチでもと予約したのが、件(くだん)のレストランである。「マキシム・ド・パリ東京」は昭和四十一年に日本に初めて誕生したフランス料理店である。東京メトロ銀座駅B9の出口に向かって数分ほど歩くと、地下道で結ばれたレストラン入り口を見つけることができる。その階段を降りた地下二階がウェイティングバーとなっており、一旦バールームに通された。その後、螺旋階段を降りた地下三階のダイニングルームへと案内される。

 濃い紅色と金色を基調にしたホールはアールヌーヴォーの調度品で彩られて、創業当時は輝くばかりに美しいものであったことが窺える。歳月を経てその輝きは華やかさを失ったが、現在は燻し銀のような重厚で落ち着いた印象を受けた。このホールを漂うどこか気怠いような澱んだ雰囲気を私は嫌いではない。燕尾服を身に纏ったギャルソンの所作からは、レストランの格式の高さと歴史が感じられる。驚いたことに八十席ほどの大きさのダイニングルームは祝日のためか満席の盛況であった。

 ランチコースは六千円、八千円、一万二千円の三つのコースがあり後はアラカルトとなる。本日はデザートがワゴンサービスで運ばれる「グルマン」という一万二千円のコースを予約しておいた。食前酒のグラスシャンパン(二千四百円)を舐めながら料理を待った。コースの内容は次のとおりである。

 前菜「フレッシュフォアグラのポワレ 蕪とほうれん草 マデラ酒風味ソース」

ソムリエに貴腐ワイン(二千円)をリクエストして料理と合わせた。高糖度で芳醇なワインとフォアグラ料理との相性は抜群で美味しさが増した。

 前菜「ウニのムースリーヌとホタテ貝のミ・キュイ アルガンオイルの香り カラスミとキャヴィア」

魚料理「真クエのロースト トリュフのクーリ フランス産茸添え」

「ワゴンデザート エスプレッソダブル」

このレストランは典型的な古典のフランス料理だと思っていたのだが、三代目シェフの斎藤料理長が提供した料理の印象は、濃厚さをおさえ現代の日本人の嗜好に合わせた軽めの味わいのものだ。それは私の口には大変に合ってどれも美味しく感じられた。またソムリエの方が料理に合わせ選定してくれた三種類ほどのワインを味わえたことも幸せである。

「マキシム・ド・パリ東京」は、料理、豪華な内装、サービスレベルなど、どれを取っても高水準なものであり、非日常的な感動を覚えることのできる料理店であった。丁度前日に「ミシュランガイド東京版」が発売された。掲載店の中には納得いくものもあれば、明らかに過大評価と感じられる店もあった。長い歴史を持ち日本の食文化を色濃く反映しているこのレストランこそ、掲載されるに相応しい店ではないのかと私には思えた。

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【閉店】(フレンチ)パ・マル

【閉店】「パ・マル」 ☆☆☆

 土曜日の夕餉、久しぶりに六本木ヒルズに出向いた。東京メトロ日比谷線六本木駅で降り立ち、雨上がりの街中を十分ほども歩んでいくと、けやき坂の辺りとなる。十一月の中旬、街路樹はイルミネーションで彩られて、銀白色の光が雨に濡れた舗道を照らしている。木々の光の輪の向こうに、クリスマスの化粧をした東京タワーが輝いて見えた。しっとりとした大気に包み込まれて少し幸せな気分となった。

 本日予約してあるフランス料理店「パ・マル」は、六本木ヒルズレジデンスの三階にあり、並びの店はかの西太后が日頃食べていた宮廷家常菜を再現する『厲家菜』である。けやき坂通り銀白の輝きはレストランの角まで続いて、その店先にはコックコートを身に纏った小柄な白髪の紳士が佇んでおられた。オーナーシェフの高橋氏は、嘗て名店『アピシウス』で総料理長を務められた御方である。

 案内された店内は、モダンであるが飾り気がなく質素の印象が強い。ここは格式ばらずに寛いで食事を楽しめそうな雰囲気だと感じた。三十席ほどのダイニングルームの奥がオープンキッチンとなっており、四名のシェフ達が立ち働く姿を垣間見ることができる。

 店のディナーコースは、五千円、八千円、一万円の三コースがあり、あとはアラカルトとなる。食前酒のシャンパン(千二百円)を舐めながら連れと相談してメニューを決めた。本日は一万円コースに、秋の実り「栗のスープ」(千六百円)を追加した。白ワインは一万円の予算でソムリエに任せ、フランスワイン(アンジュ)が供された。

 本日の料理はつぎのとおりだ。

アミューズ「サーモンのマリネのプチシュー」

前菜「フォアグラのポワレ マンゴー添え」

連れがリクエストした貴腐ワインはないようで、ソムリエのすすめでドイツの白ワイン(シュタインベルガー カビネット、グラス千円)と合わせた。フルーティーな料理は大変美味しく感じられる。

追加した前菜「栗のスープ」シェア

香辛料をきかせたスープだ。胡椒の香気や辛味が強すぎて、栗の風味など殆ど感じられず残念だ。

魚料理「オマール海老の香草風味 ドライヴェルモンテ入りソース」

火の通しが不十分なようで海老の生臭さが多少気になった。ソースは濃密で少し重いかなという感は否めない。

肉料理「仔羊と巻海老のパイ包み焼き」

羊肉の風味が強い。私にはスパイスやソースの塩気などが強すぎるように感じられた。

デザート「マンゴーのコンポートとアイス」

コーヒー

 料理全体の印象は「軽やかで、こってりしすぎず」という前評判であつたが、この店の古典的で濃厚なソースは『アピシウス』の料理を彷彿とさせ、伝統的なフランス料理の系譜に思えた。味覚とはそもそも曖昧な世界であろうが、本日供された魚料理と肉料理の味は、私の好みにはあまり合わないものである。

 ホールのサービスは二人の男性スタッフが担当される。熟年のギャルソンはベテランらしい心のこもった接客だと感じたが、若いスタッフからは慇懃無礼で御座なりの印象を受けた。

 このレストランは、インパクトの強い古典的なフランス料理を求める方々には、一流シェフの料理を気軽に味わうことの出来る料理店なのであろう。

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(フレンチ)レ・ミレジム

「レ・ミレジム」 ☆☆☆☆

 何気なく訪れた町の小さなレストランの、思いもかけぬ料理の美味しさに、はっとするような時がある。初めてそのレストランを訪れたのは八月の初旬である。小田急線玉川学園前駅から程近い街道沿いに、フレンチレストラン「レ・ミレジム」はある。

 メニューファンタジー(五千七百五十円)と名付けられたフルコースの料理はどれも美味しく感じられ、その盛付けは繊細で艶やかであり芸術的にさえ思えた。一ヶ月ほど経った九月の初旬にそのレストランを再訪してみた。

 まだ汗ばむような夕暮れ、駅から五分ほど歩いていくとビルの壁面に掲げられたフランス国旗が見える。一直線の急な階段を上がっていった階上の三階にその店はある。ホールは六卓のテーブルと二室の個室があるだけの小さなレストランだ。

 ここはコース料理のみの店で、ディナーは三千二百二十円、四千六百円、五千七百五十円、九千二百円の四コースとなる。本日は、ロイヤルジャパニーズ(ミレジム風懐石料理)という九千二百円のコースを予約しておいた。

ホールのサービスは、華奢な感じのベテラン男性スタッフが一人で全てを取り仕切っている。グラスのシャンパンやカクテル類は置かれてないようで、先ずは小瓶のビールで喉を湿らした。白ワインはハウスワインの「レ・キャトル・セバージュ2003」(四千二十五円)を貰う。

本日供された料理は次のとおりだ。

・アミューズブューシュ「トコロテンと生雲丹の冷製」

・冷前菜

「岩牡蠣の冷製」「大サザエのマリネ」「生独活、柚子味噌」「生雲丹とズワイ蟹、海老のジュレ」「馬肉のマリネと松茸」

海鮮が主体の前菜である。ザックリ剥かれた信州生ウドのスティックは驚くほど甘くて旨い。柚子味噌との相性も良いと感じた。紫ウニの殻に盛られた「ウニ・ズワイガニ・エビのゼリー寄せ」は秀逸の一品と思えた。レンゲで供された「馬肉と松茸」のワンスプーンにはインパクトが感じられた。

・オードブル「フォアグラと茸のテリーヌ」

数種のハーブも添えられた、松茸、舞茸、椎茸、マッシュルームなど茸のテリーヌからは、先駆の秋を感じた爽やかな一品である。

・温前菜「フォアグラと大根のポワレ」

和風のような優しい味付けである。

 ・魚料理「焼き蛤」

『ヌキテパ』を彷彿とさせる一品だ。盛られた白塩にシダや南天の緑葉を添えて、ごろんと焼き蛤が一つ転がっていた。

 ・口直し「パイナップルのシャーベット」

マルガリータを模して器のカクテルグラスの縁にピンクシュガーを付けるなど、シェフの拘りが窺える。

 ・肉料理「鹿児島産黒豚のロティと茄子のフリットとハーブ」バジル葉のピュレをベースな緑色のソースで、美味しく感じられた。

     デザート

ストロベリー、ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリーなど色々なベリー類とレモングラス風味のゼリー、バニラアイスなど。

 ・コーヒーと小菓子

硝子の大皿に並べられた六種類の小菓子には、ユキヤナギの一枝が飾られている。

このレストランの料理は、先ず見た目の美しさが大変印象に残った。契約農家から直送されるという厳選された野菜類も、供された料理にふんだんに使われている。中村大輔シェフの繊細な感覚の盛り付けは、味の良さにも繋がっているように感じられた。

特にメニューファンタジー(五千七百五十円)と名付けられたフルコースの料理をお勧めしたいと思う。華やかで美しい数々の料理からは、シェフの稀有なる力量を知ることができる。急行電車も停車しない東京の片隅の町に、ひっそりと小さなフレンチレストラン「レ・ミレジム」がある。

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(フレンチ)ヌキテパ

「ヌキテパ」☆☆☆☆

二十七歳で初めて料理人を志したという高名なシェフがいる。現在五十八歳になる、そのシェフの前歴は、体操のオリンピック候補選手であり、日本バンタム級六位のプロボクサーである。その後、新宿の街で屋台を引かれていたこともあったという。その激しい生き様は、その身をもって人生についての洞察を示し教えてくれている。

 土曜日の夕刻、JRの五反田駅で降り立ち、暮れそうにもない黄昏の八山通りを十分ほども歩んでいくと、閑静な住宅街に佇むフランス料理店「ヌキテパ」に辿り着くことが出来る。予約してあった開店時間の午後六時には五分ほど遅れてしまったが、既にホールには二組六名の客達が先着されていた。連れと二人、洋館の空を庭木の厚い緑が蓋いつくしている窓際の席に案内される。ドイツ大使館員の住居を改装されたという瀟洒なホールのキャパシティーは五十席ほどであり、その居心地は良さそうだ。

 厨房内で三、四名の料理人にまじり立ち働いている、小柄な田辺年男シェフをお見掛けした。鍛え上げられた肉体に、純白のキャップとコックコートを纏った髭面の田辺シェフは、古武士のような風貌である。そしてもうすぐ還暦とは思えぬ若々しさも感じられた。

 テーブルの上には私達の名も記されたシェフ手書きのメニューが置かれている。「三崎の海産物と畑のメニュー」と称した一万円コースの品書きは、五品ほどの料理が書きとめられており、六千五百円コースは「少し軽め」と左下に記されていた。女性スタッフにその上のコースについて尋ねてみると、それも出来るということなので、当日は「シェフのおまかせコース」一万五千円を注文してみた。

アペリティフはシャンパンと西瓜シャンパンの二種類があるという。当然のことながら「オリジナルのスイカの食前酒」千二百円を貰った。小皿に盛られた十粒ほどの青オリーブと共に供された、彩かなスイカシャンパンは、漂う西瓜の香りが夏の到来を感じさせるものだ。本日供された料理はつぎのとおりだ。

「生ウニ・黒パン添え」 二つに割られたウニ殻の中には、瑞瑞しい天然の紫ウニの身がたっぷりと詰まっており、芳醇濃厚な味わいの一皿だ。添えられたバターたっぷりの黒パンとの相性もよいと感じた。

「地ハマグリの炭火焼き」 白皿に真っ黒に焼かれた大ハマグリが二個、ごろんと転がっている。ナイフで貝殻を開くと芳ばしい磯の香りが広がった。味付けは海水だけの簡素な料理であるが美味い。生ウニや焼ハマグリを「今日の料理に合わせたシェフお勧めのワイン」(ブルゴーニュ産の白ワイン・グラス千円)で楽しんでみる。

 「フォアグラのテリーヌ・インゲンのソテー、土のソース」 魚介フレンチを称するレストランであるが、特別にフォアグラのテリーヌが運ばれた。添えられたインゲンのソテーには、ミネラルたっぷりという「土のソース」が掛けられる。「野菜は土から生まれる」という素材とソースの組み合わせは、新たなインパクトを生み出していた。トリュフも加えられた土のソースからは大地の響きが感じられるようだ。フォアグラのテリーヌはポルトワイン(グラス千五百円)と合わせると美味さが増した。

 「磯魚のうらごしスープ」 鱸(すずき)などの魚の頭を擂り潰して、その内臓も加えられている濃厚なスープだ。塩の強さと生臭さが少し気にはなったが、食べこんでいくと野趣に富んだ味わいに思える。連れがチョイスした「メロンの冷たいスープ」は実に爽やかで繊細だ。この二種類のスープは両極端に違う味わいの料理である。

 「石鯛のソテー」 一万円のメインは「すずきのソテー」であるが、一万五千円のメインは石鯛が供された。一夜干しされたような石鯛のソテーは、極上の干物をフォークとナイフで賞味しているような不思議な錯覚に囚われる。添えられた皮の部分もパリッとして美味い。

 デザートは「ブルーベリーのソルベ」と名物の「すいかのショートケーキ」である。食後の飲み物はエスプレッソを貰った。

 料理全体の印象は、ボリュームが欠けていたことは残念であったが、供された料理は私の口には合い、どれもが大変美味しく感じられるものである。そして「ヌキテパ」の料理から、荒磯に石積みのカマドを築き、海の幸を焚火で丸焼きにする漁師料理の浜焼きを思い出した。海の香りや潮の匂いで味付けされた魚介フレンチは、その向こうに潮騒や海風までもが感じ取れる気がする

 このレストランは正統派フレンチを望まれる方にはお勧めできないが、レストランに非日常の感動を求める方々には最良のレストランであろう。「料理は人なり」という言葉のとおり、三崎漁港直送の魚介類と厳選された野菜は、田辺シェフの自由な発想によりシンプルな逸品料理へと仕立てられていく。当日、料理にこめられたシェフの美意識と情熱は、私に十分伝わってきたように思えた。

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(フレンチ)おはらス・レストラン

「おはらス・レストラン」☆☆☆☆☆

 平日休みの昼下がりに、大崎にあるフランス料理店「おはらス・レストラン」に出向いてみた。五反田駅から曇り空の下、地図を頼りにごく有り触れた街並みを、七、八分も歩いていくとレストランに辿り着くことができる。

 階段を下り地下一階にあるレストランの扉を開けると、ドイツ人の熟年マダムが我々を笑顔で出迎えてくれる。アイボリーを基調としたウッディフロアのダイニングルームは、落ち着いて心安らぐような雰囲気があった。そのホールのキャパシティーは三十六席ほどである。

 予約してある私達は壁際の一番奥のテーブル席に案内された。卓上には、母の日に因み、赤や白、黄色のカーネションが幾重にも飾られている。先客は四人連れの女性グループと、悠々と一人で食事をされていた男性客が二名のみである。この店のランチコースは、三千円、五千円、七千円の三コースがあり、メニューを見ると前菜、魚料理、肉料理など殆どが数種類からのプリフィクスとなっている。料理によっては千円から二千五百円ほどの追加料金が設定されているものもあった。

 食前酒のカンパリオレンジを楽しみながら、マダムから料理説明を聞き、連れと相談しながら料理を選んだ。当日は七千円の「旬のコース」を注文してみる。ワインは赤白グラスでソムリエンヌにお任せする。ダイニングルームは地階にあるのだが、天窓から差し込む数え切れぬ光の帯が室内の照明と相俟って、十分な明るさが保たれている。

 アミューズはパクチーとセロリの葉が散らされた「鰯とジャガイモのサンド」が供された。どこにもある食材であるが、アンチョビ風ソースの料理は、白ワイン(アルザス ピノ・ブラン)の風味と良く合って美味しく感じられた。

 前菜は、私は「釜蒸しホワイトアスパラガス マルデーズ・ソース」を、連れは「フォアグラの冷製 ブリオッシュとトマトと彩り野菜のマリネ添え」(+千円)を選んだ。

日本に二台しかない、瞬時に熱が入れられるという機械で蒸し上げられた三本のホワイトアスパラガスに、微かに甘いオレンジ風味の柑子色(こうじいろ)のソースが添えられている。ソースに紅の柘榴の粒が散りばめられた、歯応えも素晴らしい料理は、春の香りと味覚が凝縮された絶品である。特に穂先の部分には唸るほどの美味しさを覚えた。

連れがチョイスした冷製のフォアグラ料理をシェアして貰う。リクエストした極甘口のデザートワイン(キュイレロン・ルッシリエール)がフォアグラの旨さを引き立ててくれる。

「冷製 羊蹄山麓 京極町産 人参のスープ」は、裏漉しされ煮詰められた人参のクリームスープだ。カプチーノ仕立ての山吹色をした冷製のスープは、生き生きとした口当たりが実に旨い。連れと無言のままに味わい尽くした。

本日の魚料理は太刀魚とのことで、肉料理の「比婆牛いちぼ肉のステーキ ベアルネーズソース添え」をチョイスした。広島県中国山地で生産された和牛の、一番良質といわれているモモの赤身肉を用いたステーキだ。グラスで赤ワイン(アンサタ2002)を貰う。供されたステーキは、外はしっかりと焼かれているが、中は血がしたたるようなレアな焼き加減で、香草の入った香り高いソースとの相性も良く、添えられた彩かな野菜とともに、大変美味しく感じられた。

連れに私のデザートを進呈して、マダムと相談して食後酒としてカルヴァドス(ルモルトン1944)を頂いた。カルヴァドスとはリンゴ酒を蒸留して造られた酒だ。ブランデーグラスに注がれた琥珀の酒からは熟成した果実の香りが漂う。しなやかな味わいのカルヴァドスを舐めながら、デザートを平らげる連れをぼんやりと眺めているのは少し幸せだ。連れのデザートは「焼きたてチョコレート ココナッツのシャーベットを添えて」と「柑橘風味のプリン おはらス風」であった。料理の締めは、小菓子とエスプレッソである。

料理全体の印象は、七千円というコース値段に見合った材料が十二分に提供されており、アミューズからメイン料理に至るまで、どの品も大変に美味しく感じられた。正統派フレンチの味のよさとコストパフォーマンスのよさを考えると、この店は東京一のフレンチレストランではないかとさえ思えた。ホールを担当されたマダムとソムリエンヌの二人は非常に親切丁寧であり、そのサービスレベルは高いものだ。

途中テーブルに挨拶に来られた、小原敬シェフは優しい面差しの料理人である。その人柄と、垢抜けて見えるシェフの所作に見惚れて、私は瞬時に彼のファンとなった。

快い昼餉の時を終え、シェフやマダムに見送られて地上に出ると、仄暗い空が崩れて外は雨模様である。

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(フレンチ)シェ松尾・松濤レストラン

「シェ松尾・松濤レストラン」 ☆☆☆☆

2006年最後の食べ歩きは、連れの誕生日の祝いも兼ねて、渋谷にあるフランス料理店「シェ松尾・松濤レストラン」を予約しておいた。誕生日は、ここで食事を楽しみたいという連れの希望もあったからだ。暮れも押し迫った十二月三十日、渋谷の松濤でタクシーを降りると、辺りは閑静な屋敷町である。日もとっぷりと暮れ暗くなった中、辿り着いた先には石造りのモダンな門柱があった。

ここは大正時代に建築された古い洋館を改装して1980年にオープンされた一軒家のレストランである。目配りが利いているのか直ぐに屋外にスタッフが出て来られた。店に入ると更に三名ほどの男性スタッフが出迎えてくれる。エントランス奥の暖炉が設えられたウェイティングバーに案内された。室内のデザインは重々しく落ち着きを感じさせるものだ。長い歳月が経過した建造物にアンティークの家具などが見事に調和して、どこか懐かしさを感じる心地好さがある。

やがてギャルソンに案内されたのは、窓からは壺庭の石灯籠なども見える、ダイニングルーム奥の半個室のテーブル席である。本日は、寛いだ夕餉の時が過せそうな気分となった。

食前酒はシャンパン(三千円)を貰った。ワインはシニアソムリエの方に料理に合わせたものを、グラス(二千円から五千五百円)で選定してもらうことにした。本日のコースディナーは二万円の一コースのみである。

本日、供された料理はつぎのとおりだ。

「トリュフのスープ スタンダール風」

ビーツの真紅色、黒トリュフの灰白色の冷製スープが、グラス内で二層仕立となっている。フランスの小説家スタンダールの「赤と黒」に因んでスタンダール風。脇に黒トリュフに見立てた、鴨肉と百合根で作られた団子が添えられている。気の利いたアミューズである。

「オマール海老のミキュイ アルガンオイル漂香 フランボワーズヴィネガーでマリネした オーガニックの小蕪 赤ピーマンのクリスタリーヌを添えて」

この店の品書きは実に詳細であるが、ソムリエから更に丁寧な料理説明がある。四つの銘柄の白ワインのレクチャーがあり、連れと別々の白ワインを選んだ。皿の中央にアルガンオイルをベースにしたグリーンのソース、その周りに六個のオマール海老や蕪などの料理を配した彩りも鮮やかな一皿だ。半焼きに調理されたオマール海老の風味と蕪のパリパリとした食感と酸味が美味さを増している。オマール海老には赤ピーマンの煎餅がのせられ、その上にキャビアが盛られていた。

「鴨のフォアグラのソテー、紋平柿のカラメリゼ、根菜のコンポジション」

フォアグラの上に薄切り蕪、その上に薄切りの柿がのせられている。ソースはラズベリソース。脇にオレンジと蕪のソースと柿と紫芋が添えられている。リクエストした貴腐ワインは二銘柄の貴腐ワインの中から選ぶ。このフォアグラのソテーは私が今まで食べたフォアグラ料理の中で一番美味しいと思えた逸品である。合わせた貴腐ワインも最上のものと感じられた。

「能登牡蠣の温製、豆乳のブルーテ和え カラスミのプードル、コールラビ添え」

殻付きの三個の牡蠣料理だ。コールラビ(蕪甘藍)という珍しい野菜が添えてある。牡蠣は好物であるが、巷を騒がしているこの時期にコースで牡蠣を供することは、いかがなものかと思う。

「鮟鱇と紅芯大根のロール仕立て、クランベリーのジュとピスタチオのカッセ」

鮟鱇を紅芯大根で巻いてある。ソースはクランベリーソース。鴨頭葱と三粒のクランベリーの酸っぱい果実も添えられていた。取り留めの無い凡庸な味と感じた。

この料理店で提供される「パン」は、ルクセンブルグで40%焼き上げた後に急速冷凍し空輸される。そして厨房で仕上げられて提供されるそうだ。サンフラワーとオリーブ入りの二種類があり大変美味なパンだ。

「お口直しの(カボス)シャーベット」

「萩、見蘭牛サーロインの網焼き レフォール添え ソース・ベルジュテ」

網焼きされた牛肉の上に削り昆布の様な大蒜とホースラディッシュのスライス。ジャガイモのミルフィーユとホウレン草のブリュレ、博多杉茸などが添えられている。見蘭牛は希少な牛らしいが、この赤身のステーキ肉は私には平凡な味に思えた。肉料理には二種の銘柄の赤ワインを合わせる。

「熟成チーズとドライフルーツ」

フレッシュの白チーズ、ブルーチーズ、山羊のチーズ、ドライフルーツ入りのパンと、無花果や葡萄などのドライフルーツ。

「本日のデザート コーヒー」

チョコレートケーキ、アイスクリーム。白カシスや赤カシス、ラズベリー、ブルーベリーなどの果実など。エスプレッソダブル、姫林檎のコニャック漬け。

食後酒のコニャック(四千円)で締めとなった。

本日の供された前菜の二皿(オマール海老とフォァグラ)には、見惚れるようなシェフの技の冴えを感じるものがあった。そして丁寧な料理説明と、料理に合わせて選定された頃合の六種類のワインなども味わえ、贅沢で幸せな時間を過すことが出来たと思う。

機会があれば日中に訪問し、中庭の緑を見渡しながら、悠々と昼餉など楽しみたいものだ。

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(フレンチ懐石)レストラン よねむら

フレンチ懐石「レストラン よねむら」 ☆☆☆☆

平日の休みは、のんびりとランチを楽しんでみるのもいいものだ。昨晩から吹き荒れていた野分けの風も明け方には治まった。そんな小春の日和に、銀座六丁目は交詢ビル四階にあるフレンチ懐石「レストラン よねむら」を訪問してみた。

この店はフランス料理を基本とした創作料理を小皿にて十皿ほども提供してくれるという。楽しみに訪れたレストランは、エントランスからは厨房を囲んだ十二席ほどのカウンター席が見え、店内はモダンな白色を基調としたデザインである。我々はホール奥にあるテーブル席に案内された。テーブル席は模様硝子にて仕切られた半個室風の設えで、居心地がよさそうな雰囲気である。

ここはコース料理の店でありアラカルトはない。ランチコースは六千円、九千円、一万二千円の三コースで、ディナーコースは一万四千円の一種類となる。当日は一万二千円のランチコースを注文してみた。向かいのバーカウンターの棚には驚くほど多種の酒が並べられている。食前酒はシャンパン(ヴーヴー・クリコ)を飲んだ。ワインは「ソアーヴエ・クラシコ・ラ・ロッカ」という北イタリアのやや辛口の白ワイン(九千円)を貰った。

本日供された料理は次のとおり。

①アミューズ「茸のソテーと鴨のロース肉」

(ワンスプーンの料理で供された。ソースはキウイソース。)

②「鮃のサラダ」

(一口サイズが三個。キャベツ、ルッコラ、洋梨、ヒラメなどが重ねられ、一番上にイベリコ豚の生ハム。そして生ハムの上にヒラメのエンガワが一片乗せられている。パセリのソース。エンガワはスタッフに尋ねるまで何だか判らず、形容し難い味である。)

③「三陸産牡蠣と百合根と春菊のグラタン」

(牡蠣の殻を器に見立てた熱々の料理だ。なかなか旨い。)

④「カラスミと車海老の冷製パスタ」

(小鉢の青海苔と山葵をパスタに掛けて食べる。これは一体、何料理なのか。)

⑤「丹波牛のカツとフォアグラのソテー」

(上に細切りのトリュフ、フォンドボーとフォアグラソース。)

⑥「松茸のホイル焼き」

(松茸、栗、銀杏など秋を感じさせる一品だ。柚子とバターのソース。)

⑦「京野菜のポトフ」

(京人参、里芋、大根、生ハムなど。摩り下ろされた柚子がアクセントとなる。)

⑧「香箱蟹(コウバコカニ)の蒸し御飯」

(香箱蟹とはズワイ蟹の雌のことだ。甲羅を器に足・胴の見抜きと内子、外子が添えてある。滋味豊かな逸品だ。マヨネーズで和えた胡瓜と梨も混ぜられていた。自家製の漬物と冷たいほうじ茶も供された。)

⑨口直し「ブラットオレンジのシャーベット、シャンパンゼリー」

⑩デザート「チーズをのせたチーズケーキ、バニラアイス」

⑪「小菓子(クッキーとアーモンドショコラなど)」「エスプレッソ ダブル」

事前にスタッフに「お品書き」はと尋ねたら、「この店では次に何が出るか、お客様にワクワクして待っていてほしいので、お品書きは用意していない」との話である。その言葉のとおり、供された料理の数々は「創作料理」フレンチ懐石の名に相応しい魅力的なものであった。

料理全体の印象はどの料理も美味しく感じられ、一万二千円のコース値段に見合った旬の素材が供されていたと思う。ただスタッフのサービスレベルに、かなりばらつきがあった事が残念である。本日、米村昌泰シェフは不在であったが「洋食と和食を絶妙なバランスで融合させ、まろやかなオリジナル料理が味わえます。」という店のコンセプトは、その一品一品に具現されていたと感じられた。

帰路、プランタン銀座店『ビゴの店』でパンを買い求め、銀座三丁目の香楽処「香十」にも立ち寄る。今日はゆっくり時間が流れたようで幸せであった。車窓から眺めた東京の西の空は見事な茜色に染まっている。

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