(ステーキ)銀座うかい亭

「銀座うかい亭」 ☆☆

 暮れも押迫った十二月の下旬に、古典芸能が好きな連れと千秋楽の歌舞伎座に出掛けた。歌舞伎芝居が跳ねた後、枯葉を踏みしだき木枯らしの銀座を散策してレストランへと向かう。本日は銀座五丁目にある「銀座うかい亭」を予約してある。フォークとスプーンをモチーフとしたオブジェを眺めながら入店すると、出迎えた熟年女性は、買い込んだ沢山の食料品を手に下げた私達を胡散臭そうに一瞥し、とても億劫で迷惑そうにコートと買い物袋を預かっていった。私の記憶の中では「うかいグループ」のサービスレベルは高いはずであったのだが、出だしから銀座の店は全く違うようである。

 予約時に希望した九室ある個室はどれも満席で、連れと二十六席ほどのカウンター席へと案内される。内装は移築した日本古屋に数々の西洋のアンティークな調度品が装飾されており、アンバランスな印象が強い。中央にアマダイやズワイガニ、カワハギなどサンプルの魚介類が飾られ、モザイク模様が施されたカウンターは海の底をイメージしているそうだ。

 ここのディナーコースは、一万二千円、一万五千円、一万八千円、二万三千円の四コース、あとはアラカルトとなる。シャンパン(二千円)を舐めながら連れと相談してスペシャルディナーコース(二万三千円)を注文した。グラスの白ワインを頼むと、ノルマでもあるのかスタッフが高価なグラスワインを執拗に勧めるのには辟易とした。断って一番安価なワイン(グラス千二百円)を貰う。当日、カウンター席は七組のカップルの客達がいたが、四組は同伴の客筋である。

本日供された料理は次のとおりだ。

アミューズ「ブルターニュ産 オマール海老の冷製」コンソメゼリーにキャビアやポアロ葱が添えられており美味い。

前菜「フランス産 フレッシュフォアグラのソテー」甘酸っぱいカルバドスソースと丸ごとの姫林檎の甘煮は、フォアグラとの相性は抜群で大変美味しく感じられた。目前の鉄板上では昆布を被せた鮑に塩を盛って包む「岩塩蒸し」のパフォーマンスが行なわれる。

スープ「うにのクリームスープ」葱がベースとなったカプチーノ仕立てのスープは、ウニの風味など感じられない凡庸な味だ。

魚介料理「鮑の岩塩蒸し」肉厚な鮑は青森県三戸産のものだ。ブロッコリーを添えた、たっぷりの白ワイン風味のバターソースで食べる。この料理はバターの匂いと脂が強過ぎ、鮑本来の風味を台無しにしているように感じた。鮑の肝はソテーされたものが、赤ワイン風味のコンソメとニンニクのソースと共に小さな銅製の片手鍋に盛られた。それをスプーンで食べる。このソースの味も今ひとつで美味くない。この料理はわざわざ手を掛けて優れた素材本来の風味を消し去っていると思えた。

肉料理「うかい特選牛ステーキ」島根県産の黒毛和種のサーロインステーキだ。赤ワインをグラス(二千円)で貰う。ステーキの焼き方はミディアムレア、付合せはトリュフサラダ(マーシュ、チコリ、グリーンリーフ)とガーリックチップスである。シェフの勧めで一切れ目は何もつけず肉本来の美味しさを味わってみる。残念ながら私はこの肉の美味しさを感じることが出来ない。脂まみれの鉄板と相俟って肉自体も旨くないような気がした。後は好みで塩か醤油をつける。

締めに「ガーリックライス」、「赤だし」、「漬物」が供された。このガーリックライスもくどい味付けに感じた。

食後に移動したデザートを楽しむソファー席は手狭に感じられ、カウンター席さえ垣間見える。やはりワンフロアー二百坪程度の広さではゆとりある設計など無理なのであろう。ここは二十代の頃より利用した『横浜 うかい亭』とは格段の差がある。

二種類から選べるデザートは「苺のパフェ」と「チョコレートパェフ」を連れとシェアして味見した。「プチシューやマドレーヌ」などの小菓子と「エスプレッソダブル」で締め括る。

 料理全体の印象は、全体のボリュームは十分なものであったが、勘定に相応しい満足感など感じることが出来ないものである。専属シェフの調理は繊細さを欠き、営業に熱心なホールの男性スタッフ達は、客への目配りや気配りが足らずサービスのレベルは低い。唯一、デザート担当の女性スタッフのサービスは親切丁寧なものであった。ミシュランで星を獲得し増長されたとは思いたくもないが、料理も接客も上辺を繕っただけのレストランである。

ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/

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(ステーキ)麤皮 あらがわ

 「麤皮 あらがわ あら皮  」 ☆

新橋にあるステーキ専門店『あら皮』を訪問した。この店を訪ねるのは丁度一年ぶりである。ここは巷では「日本一高いステーキ屋」と噂の店だ。古ぼけたビル地下のレストラン街の一番奥にその店はある。この店のステーキを日本一だと評価しているガイドブックもあるが、最近は二年ほど前に銀座七丁目にオープンした『かわむら』が一番だという話も多い。店は高価格のイメージがすっかりと定着してしまったようだが、昭和四十二年の創業以来、既に三十九年間も営業を続けられている老舗だ。

久しぶりにステーキが食べたくなり、二日前に電話をしたら直ぐに予約を取ることができた。当日は店で一コースのみのステーキディナー四万五千円(魚系が二皿に、サラダ、ステーキ、デザート、コーヒー)を予約しておいた。昭和そのままのレトロな雰囲気のダイニングからは厨房を垣間見ることが出来る。

この店はメニューの提示はない。すべてスタッフからの口頭の説明となる。そして料理の説明はしても価格は言わないので、一見客のアラカルトの注文は非常に不安である。また当日はコース料理を受け付けてくれないので注意が必要だ。一年前は四万円予算でお任せしたが、この店では事前に店に予算を告げるか、遠慮せずはっきりと価格を確認された方が無難だと思う。

アペリティフはカンパリオレンジ(千二百円)を貰った。

本日供された料理はつぎのとおりだ。

①「北海道留萌産 毛蟹の姿蒸し」

(一尾の毛蟹を二人で半分ずつ食す。その蟹は冷蔵庫に入っていたようで冷たかったが、味は良いと感じた。)

②「房総産 真穴子の炭火焼き」

(日本酒がほしくなりスタッフに尋ねたが置いて無いとの事。仕方なく白のグラスワインを頼む。このワインの単価が後で見たら一杯四千円とは驚いた。)

③「公爵仕立てのサラダ」

(大仰な名前で聞かされる方が恥ずかしくなる。具はクレソン、鮑、烏賊、サイマキ海老、僅かなキャビアなど凡庸なサラダだ。)

④「サーロインステーキ」

(この店はサーロインが主体でフィレ肉は置いてない事が多い。供される赤身のステーキ肉は、兵庫県は純血統種の三田牛(さんだぎゅう)のみで、その大きさは二人分で四百グラムほどだ。価格は百グラム一万円が目安となる。その肉の塊を金串に刺し、レンガ造りの炉窯にて紀州備長炭を使い十五分ほどで焼き上げる。シェフにお任せの焼き加減はミディアムレアだ。二百グラムのステーキの付け合せは、ベイクドポテト、人参、サヤインゲンなど。その味付けは塩と黒胡椒のみで肉本来の味を引き出している。

このステーキは三口目位までは肉本来の旨みや食感など抜群に美味しいと思った。しかし食べ進むうち段々とサシの脂が強く感じられるようになった。連れも同様なようで彼女はステーキ肉の三分の二でギブアップした。来栖けい氏が著書の中で、このステーキを「後口には脂のしつこさを微塵たりとも残さない、それがこのステーキの凄みなのである。最高級の証。」と書かれていたが、それは嘘である。

そしてなぜかこの店には赤のグラスワインは無い。スタッフは二万円と三万円の赤ワインのハーフボトルを勧めてきた。しかし、一番安い八千円のハーフボトルをチョイスした途端、不服そうな顔になったのは如何なものか。)

⑤「デザート 枇杷」「コーヒー」

ここの料理全体の印象は、三田牛のステーキ肉そして留萌産の毛蟹や房総産の穴子など、素材を厳選し、その調理方法は素材本来の味を大切にしていると感じた。

しかしこの店のステーキはガイドブックなどで高評価され過ぎているとも思った。この日の勘定は二人で十二万二千円。当日は金曜日の夜ということもあり店内は盛況であった。私達を除いて一組が社用の男性客、残りの三組はカップルの客であった。

銀座『かわむら』のステーキもそうだが、私には最高といわれている牛肉(赤身のステーキ肉)の美味しさは、なかなか理解できないものがある。『かわむら』は予約の取れない店で、私は二ヶ月ほど待たされたが、ここ『あら皮』の予約はすんなりと取れた。興味の有る方は、話のタネに一度訪問されてみるのも良いと思う。但し、ワインの注文はくれぐれも注意が必要であろう。

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(ステーキ)かわむら

「ステーキ かわむら」

 今回、訪問したステーキ専門店の銀座「かわむら」は、最近では、最も予約の取りづらい店であった。食べ歩きをするのは、火曜日の晩が多いのだが、以前に「かわむら」に予約を入れたところ、火曜日の晩で予約が取れたのが、2ケ月後の今日であった。あまりにも間が空いたので不安になり、その前日に、店に予約確認の電話を入れてしまった。

51歳の自分にとって、子供の頃の大ご馳走と言えば「ビフテキ」である。年に1、2回、誕生日などにしか食べられないビフテキは、子供心にも最高で至福の食べ物であった。

貧乏でも、気っ風がいい母親は、特別の日には、必ず牛肉を焼いて食わしてくれた。しかし、歳を重ねるにつれ、徐々にステーキには、美味しさを感じなくなってきた。

ホテルの鉄板焼きや、日本一高いといわれるステーキ屋にも行ってみたが、何故か、記憶の隅に残った、子供の頃の感動には、遠く及ばない。そして淡い期待を胸に、今評判の「かわむら」を訪問した。ここは、銀座7丁目・数奇屋通りにある、カウンター席が8席のみの、小ぢんまりとした店である。木製の扉を開けると、厨房を囲むように客席があり、ご主人の河村太郎氏が一人で客をもてなす。この店にはメニューは無いので、シェフに、料理の希望や予算を告げれば、後はお任せとなる。牛肉は、ヒレ、サーロイン、ともに100グラム1万円が目安だ。当日は連れとも相談して、ヒレステーキを150グラムとし、3万円予算の標準的なコースでお願いした。

笑顔を絶やすことのない河村シェフは、物腰の極めて柔らかな方で、店の居心地は良い。

当日のメニューは、つぎのとおりだ。ワインはグラスでお願いする。(グラスワインは、1杯2千円)

       前菜 新鮮な魚介類のカルパッチョと牛刺し。

(ヒラメの刺身やエンガワ、ホタテ、生サーモンなど。牛刺しは、特製タレにて食する。グラスで2杯含んだ、浦霞の純米酒との相性もよく美味い。)

       コンソメスープ

(供されるステーキは、目の前の板場にて、惜しげもなく回りを削ぎ落とし、その中心を使用する。そして削ぎ落とされた最上の肉片は、コンソメスープの材料となる。一片の濁りもないスープは、凝縮された上品な牛肉の旨みが口中にひろがる逸品だ。)

     タルタルステーキ(ハーフ)

(隣席の同伴客の皿を見て、食いしん坊の気持ちが、我慢出来ずに追加オーダーした。一人前を連れとシェアして貰う。焼かれた薄いパンにのせて食べると美味い。ワインが進む。)

     サラダ

(百合根や蓮根、牛蒡、そして多種類の緑黄色野菜を使ったサラダだ。)

     ヒレステーキ 温野菜添え 

(ヒレ肉の塊は、厨房の奥で30分位の時間をかけて、本当にじっくりと焼かれる。焼き方を眺めていると、焼くというよりは、肉を炙っている感じだ。シェフにお任せした焼き加減は、とても綺麗な焼き上がりの、ミディアムレアであった。その柔らかなヒレ肉を、塩か和風ソースにて食べる。私には、和風ソースの方が合うように思える。付け合せの温野菜は、玉葱と隠元など。)

     ガーリックライス 香の物

(ガーリックライスは、モチモチとした食感だ。連れが頼んだ、ビーフカレーも、一口味見してみたが美味い。)

⑦ デザート三種盛り合わせ コーヒー

(バニラアイス、ヨーグルトシャーベット、カスタードプリン。)  

料理全体の印象は、ボリュームもあり、十分に満足できるものであった。そして気配りのきいた、河村シェフの接客も見事であった。供されたステーキからは、牛肉の旨みというものは理解できたが、その感動は少なかったように思う。

当日、カウンター席には、社用と思われる男性客の3名と、同伴客の2名がおられたが、この料理(赤身のステーキ肉)に対する印象はどのようなものであったのだろうか。

新橋の「あら皮」のステーキもそうであったが、私には、最高といわれる牛肉の美味しさは、なかなか理解できないものがある。

YOSHI爺

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