(タイ料理)マイペンライ

「マイペンライ」☆☆

初めて「マイペンライ」を訪れたのは、四年ほど前に遡る。当時は大学生で、総合格闘技のジムに通っていた甥っ子から、多くのプロファイターが集まる、美味しいタイ料理店が町田にあると教えられた。その店の関係者がUWFに所属したムエタイボクサーであったという噂もきいた。これを切っ掛けに二度ほどレストランを訪れたのだが、或る理由により暫く足が遠のくことになる。

「食べログ.コム」の東京タイ料理部門を見ると、このレストランが上位にランクされている。六月の上旬、久しぶりにタイ料理店「マイペンライ」を訪問してみた。小田急線は町田駅で降り立って、東口から繁華な通りを三分も歩くとレストランのある建物に行き着くことができる。一階は「原町田六郵便局」となっているので、それが目標となる。古びた雑居ビルの二階に上がり、レストランの草臥れた遣り戸を開けると、タイ王国の民芸品などで装飾された店内は、タイ人などの出迎えと合わせ、異国情調を存分に味わうことができる。

 手狭に感じられるホールには大小十卓ほどのテーブルが並べられ、カウンター仕様の席もある。そのキャパシティーは三十席ほどである。厨房はタイ人シェフが、そして数名の男女のタイ人スタッフがホールを担当される。十年ほど前に開業された店も、このごろはすっかり名の通ったタイ料理店となった。

 本日はセット料理を止めて、連れと相談しながらアラカルトで料理を注文した。予約が必要な生春巻は、あらかじめ頼んでおいた。チャーンビールで乾いた喉を潤しながら、「辛くて酸っぱくて、甘い」タイ料理が供されるのを待った。

 愛嬌のある笑顔のタイ人娘が「生春巻(ポピアソ)」を運んでくる。海老、素麺、野菜などで、やわらかに膨らんだ生春巻に、甘酸っぱいタレをたっぷりつけて賞味する。しなやかなライスペーパーや素麺のモチモチした食感が美味さを増した。

 二品目は好物の「海老入り酸っぱ辛いスープ(トムヤムクン)」である。固形燃料が燃える焜炉は土鍋から熱々のスープが味わえて有り難い。具の海老は殻を剥かれておりシェフの細かい心遣いが感じられた。このトムヤムクンは、辛さは普通だが、たっぷりと絞られたマナオ(タイのライム)の酸っぱさが際立ったものだ。連れはたいそう気にいったようだが、私には汗がでるほどの酸っぱさである。

 三品目、現地食材のタイバジルを用いた「鶏肉のバジル炒め」は、爽やかなミントの香りと相俟って、鶏肉との相性は抜群に感じられた。チャーンビールを二瓶ほど飲んでから、タイ王国のメコンウィスキーを何杯かロックで呷った。米とサトウキビから作られた酒は鼻を刺激するような匂いがするが、含むと甘い味わいで、タイ料理と私の口には合うものである。

 四品目はヘルシーな「青パパイヤサラダ(ソムタム)」が運ばれた。辛さは控えめのはずであったが、喉に沁みいるような辛さである。

 五品目、私は好物の「肉と竹の子入りレッドカレー(ゲンペ)」を、連れも好物の「肉と茄子入りグリーンカレー(ゲンキョオワン)」を頼んだ。カレーにはライス(カオ)がついていないので追加オーダーとなる。レッドカレーは私には味が薄く感じられた。デザートの「タロイモプリン」と「オリジナルココナッツ」で締め括った。

 店が混み合ってくると、食事の途中なのに店内に煙草の煙が漂い始めた。私達の席の回りでも隣席の女性客と三人の社用族が煙草を吸い続けている。店は換気も悪いようで紫煙で靄って最悪の状態である。四年前の苦い記憶がよみがえってくる。煙草の臭いを我慢しながらレッドカレーを掻っ込んだ。こうなると料理の味わいどころではない。この店内の実態は如何なものか。「食べログ.コム」では多数の方が、この店のレビューを書かれていたが、喫煙の問題について誰一人触れていないのが不思議である。

 「マイペンライ」はリーズナブルな値段で、水準に達するタイ料理を提供する料理店である。しかしながら、このレベルのタイ料理店は数多く存在しており、この店が東京を代表するタイ料理店とは、実に過大な評価だと思われる。

 「マイペンライ」の店主に、店を禁煙にされることを進言する。喫煙客を失いたくなくて店内を禁煙に出来ない店主は、七割の煙草を吸わない客達を失っていることに気づくべきであろう。現在の姿はタイ料理の名店どころか、町のエスニック居酒屋ではないのか。

ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/

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(タイ料理)セラドン

「セラドン」☆☆☆☆

 蒸し暑い陽気が続くと「辛くて、酸っぱくて、甘い」スパイシーな料理が恋しくなる。夏の日も傾いた、七月日曜日の夕刻、京王線笹塚駅から十分ほども歩いていくと、甲州街道沿いの建物の一階に、目当てのタイ料理店「セラドン」を見つけることができる。

 天井の高いホールは座席の間隔も広々として、汗ばんだ額に涼やかな風も吹き過ぎて気持ちがいい。設えられた調度品にはセンスの良さが窺え、店内は異国情緒を味わうことができる。そのホールのキャパシティーは三十八席ほどである。

このレストランの夜の料理は、ロータス(蓮華)やオーキッド(蘭)など花の名が付けられた三千四百円、四千円、五千円の三種のコース料理と、たくさんの種類のアラカルト料理とがある。当日は「タイ料理の人気メニューを揃えたデラックスコース」だというオーキッドコース(五千円)を注文してみた。コース二品目のスープ料理は五種類からのプリフィクスとなっている。連れの希望で六品目のレッドカレーを、彼女の好物であるグリーンカレーに変更してもらう。突き出しのエビ煎餅と、よく冷された獅子ラベルのシンハビールに喉が鳴る。

本日供された料理は次のとおりだ。

①「前菜盛り合わせ」タイ王国セラドンの青磁器に盛られ運ばれた、「生春巻き、揚げ春巻き、タイ風さつま揚げ、タイ風海老しんじょ」などの、おつまみ盛り合わせは、円やかな味わいの逸品である。皿の中央には人参や胡瓜の彩かなカービングも添えられている。たちまちにシンハビール二本が空となった。

②スープは世界三大スープである「トムヤムクン」をチョイスした。チキンをベースにした香り高い濃厚なスープは、辛さよりもライム風味の強い酸っぱさが際立ったものである。私には今まで味わった「トムヤムスープ」の中では、最も美味なものに思えた。

③「辛口シーフードサラダ」

④「マナガツオのチリソースかけ」関東では馴染みの浅い真名鰹もお国が変われば花形の魚となる。小振りのマナガツオ一尾が高温の油でパリパリとした食感に揚げられている。簡単な手法な料理であろうが、かけられたチリソースは辛さと甘さの両方が感じられる味であり、なかなかに美味い。

⑤「青野菜のガーリック炒め」にんにくや赤唐辛子と共に牡蠣油で炒められた青野菜からは、こってりした風味と旨味が感じられる。

⑥「海老のグリーンカレーライス」定番のタイ料理である。カレーペーストは激辛な青唐辛子ブリッキーヌが使われてココナッツミルクで仕立ててある。

⑦デザートは「ココナツアイス」や「タロイモのプリン」など。

料理全体の印象は、日本人の嗜好に合わせた「セラドン」のタイ料理は、私の口には合って、どれも大変美味しく感じられた。サービスを担当された女性オーナーからは細かい気配りが伝わり、スタッフのタイ人の御主人は心を和ませる接客で私達を持て成してくれた。供された「辛くて、酸っぱくて、甘い」タイ料理に合わせて、シンハビール、チャーンビール、クロスタービールなどタイ王国のビールを飲み比べてみるのも楽しいものだ。また訪れてみたいエスニック料理のレストランである。

(追記)この店は全席で喫煙が可能なようだ。当日は殆ど満席の盛況であったが、幸いにして誰一人として煙草を吸う者はなく、快適な夕餉の時間を過すことができた。禁煙のレストランにされることを切望する。

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(タイ王国宮廷料理)ゲウチャイ

「ゲウチャイ目黒」 ☆☆☆☆

 七月初めの日曜日、「グリーンカレーが食べたい。」という連れに促され、レストランに夕餉の予約を入れた。訪れたのは上大崎にある「ゲウチャイ」というタイ国料理店である。目黒駅前のターミナルを跳び越して、すぐそこの旧い雑居ビルの地下に、そのレストランはあった。

 このレストラングループは、東京に四店舗、神奈川に二店舗、千葉に一店舗のレストランを展開しており、タイ王国宮廷料理、タイ国料理、タイ国惣菜家台料理などコンセプトを変えて個店の差別化を図っている。「タイそのものを食に変えるゲウチャイ」がグループのキャッチフレーズの様だが、私には言っていることの訳が今ひとつ理解できない。

 今日訪れた目黒にある店は「宮廷料理」を呼称されている。コンビニエンスストアー手前の狭い階段をゆっくりと下りていくと、謀られたように異国情調の空気が全体を包みこんでいる。雌黄をベースとした落ち着いた内装のホールのキャパシティーは六十五席ほどである。店内にはタイ王国の多数の工芸品、調度品などが飾られて、ほんのりとした雰囲気を醸し出している。壁には国王や僧侶などの写真が掲げられ、タイ国民の王制への敬愛と信仰心の厚さも感じとることができる。

 連れと二人、適度に仕切りが施された、ゆったりとしたソファー席に案内された。この店は多彩なアラカルトとセットメニューとがある。セットメニューは、四千八百円(五品)のAセット・Bセットと七千九百円(七品)のCセット、二千百円(三品)のDセットなどがあり、当日は相談して七千九百円のCセットを注文してみた。

 先ずは突き出しの「南瓜の揚げ煎」を摘まみ、シンハビール(六百円)で乾いた喉を潤す。エキゾチックな笑顔が魅力なタイ人女性の接客は心くすぐられるものであったが、店内が忙しくなるまでの間は、厨房辺りで無駄口も多い様で、ホール内には異国の言葉が飛び交っていた。酒は獅子のラベルの「シンハビール」と、象のラベルの「チャーンビール」(五百円)を交互に嗜んだ。本日供された料理はつぎの通りだ。

①「春雨サラダ(ヤム・ウンセン)」

魚醤(ナム・プラー)独特の風味に、唐辛子(ブリック)の辛みとライム(マナオ)の酸味がきいたサラダだ。メニューではレベル2の辛さとなっていたが、私には後を引くような強い辛さである。

 ②「海老のトムヤンクンスープ」

唐辛子の辛さは適度であるが、ライムの風味が強く酸っぱさと香草の香りが際立つスープであった。

 ③「わたり蟹のカレー炒め」

ぶつ切りのわたり蟹と、ココナッツ・ミルクをベースにしたカレーの組み合わせは絶妙な味わいである。この料理は私の口には合って大層美味しく感じられた。

 ④「マナガツオから揚げの辛味ソースかけ」

料理の味わいは、中国料理の「鯉の唐揚げ甘酢餡かけ」と良く似ているが、こちらの方が遥かに旨い。

 ⑤「牛肉のグリーンカレー」

セットには何故だか御飯は付いていない、当然にライスを追加した。運ばれてきたライスは細長いタイ香り米(カーオホームマリライス、三百円)である。グリーンチリと上質なココナッツ・ミルクを使ったカレーは、ココナッツの風味が旨さの余韻となって広がり、大変に美味しいものだ。

 ⑥「ピラフ(蟹)」

このピラフは添えられたレモンを絞ると、サッパリとしまった味わいとなって、締めの料理に見合ったものになる。

 ⑦「メロンとタピオカのデザート」

ジャスミンティーですと供されたお茶は、蕎麦茶のような味がする。

 ⑧「ココナッツミルクゼリー」(千二百円)を追加。

追加した温かいデザートは、下の薄緑の豆ゼリーの淡い塩味が上のココナッツ・ミルクの甘さとマッチして美味しい。

料理全体の印象は、供された料理は「辛くて、酸っぱくて、甘い」というタイ料理の特徴を見事に具現し、その味わいは繊細なものに感じられた。彩かな器や、花などのカービング(飾り切り)で見た目の美しさも演出しているなど、宮廷料理店の名に相応しいレストランだと思えた。

「ゲウチャイ」のメニューには次のような一文が書かれている。

「味覚へのご招待。本日はご来店いただき誠にありがとうございます。当、タイ王国宮廷料理ゲウチャイにおきましては、お客さまにタイ本国の雰囲気をそのまま味わっていただく為、シェフはもとよりフロアー担当にいたるまでタイ人のスタッフにてサービスを提供させていただいております。しばしの間、タイ王国への小旅行を体験して戴ければお料理の味もひときわお楽しみいただけることと存じます。言葉の壁を乗り越える前にまずはご賞味あれ。」

日曜日、六時を過ぎる頃には、この料理店のホールは満席の盛況である。

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