(熱海界隈)伊豆山 フランス料理「ヴィラ デル ソル」 ☆☆☆
八月下旬、熱海温泉に湯浴みに行った帰路、伊豆山にある「ヴィラ デル ソル」のランチに立ち寄った。連れを美味しいフランス料理店に案内するつもりが、本日提供されたコース料理は凡庸で期待外れのものであった。これ程、コース料理の味に波があるとは、まこと残念である。これでは私の評論を参考にしてくださる方々に申し訳なく、レストランの評価を引き下げ、参考までに「連れのレビュー」も掲載することにした。七月に訪問した私のレビューは、「従前のレビュー」として掲載しておく。連れの八月レビューも、私の七月レビューもその時々の真実な気持ちである。
(2009年8月、連れのレビュー)
熱海へ遊びに行き、ランチを「ヴィラ デル ソル」でとることにして予約を入れておいた。熱海からタクシーで千円ちょっとの距離だ。趣のある古い洋館で、オーベルジュでもある。連れが以前姉と訪れていて、美味しかったというので期待して行った。予約の12時より早く着いてしまったため、一階のサロンで用意が整うのを待たせてもらうことにした。海の見える席で待つのは意外と楽しく、庭の白いパラソルやブランコなどがHPに出ていたものと同じでなんだか嬉しくなってしまった。
用意が整い、二階のダイニングへと案内された。一階も二階も天井が思いの外高く、ゆったりと過ごせそうだ。窓からは海が見渡せ、遠くに初島が霞んで見えた。
食前酒を聞かれ、「お勧めは?」という質問にはちぐはぐな返答が返ってきたのには一抹の不安が過った。生の桃を使ったベリーニはないかと訊ねたら、下拵えに時間がかかるのでないとのことなのでミモザを頼んだ。連れはシャンパンを貰った。
「シェフお薦めのコース」をお願いしていたので、海を眺めながら連れとおしゃべりしながら待つ。
「鮑のサラダ」がまず供された。ラディッシュや大根、ベビーリーフなどの野菜と生の鮑のサラダだ。鮑が固い…。包丁でなら難なく切れるのだろうが、テーブルナイフでは切りきれない。当然、噛んでも歯が欠けてしまうのではと心配になるくらい固い部分があり、端の部分は残念ながら残した。三桁の数のお店を訪れたが、料理を残したことがあるのは数店舗だけだ。ドレッシングの味は悪くないだけに残念だ。
「蛤の炭火焼き、サザエのエスカルゴソース」が供された。こちらの二種類の貝は火が通っているおかげで柔らかく頂けた。
「ヴィシソワーズ」にはアサツキが散らされている。この時期、冷たいスープは嬉しいのだが、味は凡庸。
「甘鯛のソテー ホウレン草添え」は、甘鯛の鱗を残したまま、カリッと焼いてある。鱗が香ばしくて美味しい。鯛の身もふっくらとジューシーに仕上がっている。
「和牛のステーキ 茸添え」は三切れのステーキのうち、一切れしか食べられなかった。半分は脂身でフォークがすすまなかったためだ。鮪でも牛でも、サシが入っている方が柔らかく甘みがあって美味しいものなのだが、この肉は豚の三枚肉のような感じで脂身と赤身の層になっていたため、脂が強すぎたようだ。添えてある茸もソースも美味しかっただけに残念だった。
「ルバーブのグラニテ」にはグレープフルーツも入っていて、口の中がさっぱりする。
「サマートリュフ入りクリームブリュレ」は、トリュフの香りがする美味しいものだった。 コーヒーと小菓子(オレンジピール・キャラウイシード入りクッキー・チョコレート)で締めくくりだ。連れはダブルエスプレッソを貰った。
連れが前回と違うというのだが、シェフは変わっていない。甘味についてはどれも美味しかったのだが、全体に塩加減が強い印象だった。ディナーの予約がいっぱいだったのかもしれないし、体調が悪かったのかもしれない。しかしながら、店は訪れる客を「一期一会」の気持ちでもてなさなければ、リピーターにはならないだろう。次回訪れる時には、連れが美味しいと言った料理を味わいたいと願っている。 KEI
(以下は2009年7月、私のレビューである。)
梅雨晴れの日曜日、久方振りに熱海の地を姉と訪れてみた。前日の晩、昼飯は気の利いた料理が食べたいと、インターネットを検索閲覧していたら、魚介類などの海産物をふんだんに使うというフランス料理を見つけた。熱海市伊豆山にある「ヴィラ デル ソル」というフランス料理店である。その店のランチは六千五百円と一万円のコース料理のみであり、「シェフおまかせコース」一万円の予約を入れた。
昼前に熱海駅で降り立ってタクシーに乗り、くねくねとした道を五分ほども走ると、小さな鄙びた漁港の近く、西洋風建物のレストランに到着する。それは百年以上も前に建築された、紀州徳川家の図書館「南葵(なんき)文庫」を移築したもので、現在はオーベルジュ(宿泊施設付きのレストラン)となっている。
予約の名前を告げると、まずは大正浪漫、昔日の面影を残すサロンへと通された。そして準備が整うと二階にあるダイニングルームへと案内される。レストラン南葵文庫と呼称されるホールからは、まことに洗練された歴史の趣を感じた。そのキャパシティーは十二席ほどである。窓辺の席からは相模湾の輝く水面や、遥かに木々の緑に覆われた初島や真鶴半島などを見晴らすことができた。
まず私はシャンパン(千七百円)、姉はミモザ(千七百円)を注文して喉を潤した。供されたオリーブを摘みながら給仕長から海の幸をメインとするコース料理の説明を受ける。その説明を聴きながら、偶然にも三日前に訪れた五反田にある「ヌキテパ」というフランス料理店を思い起こしていた。尋ねるとここの金野シェフは、嘗て「ヌキテパ」の田辺シェフの下で修業された御方であり、その料理の縁に驚いた次第である。
人に感動をもたらす料理とは、非日常なものであるが、このフランス料理店は十分その要件を満たしているように私には思えた。本日供された料理はつぎのとおりである。ワインは白ワインを数杯、グラス(千円)で嗜んだ。
「トマトのジェルスープ」
「ワラサのカルパッチョ」
「蟹身のリゾット 芽葱添え」
「地ハマグリの炭火焼き(二個)」
「磯魚のうらごしスープ」
「イサキのソテー 肝添え」
「デザート ガトーショコラ」
「焼き菓子、オレンジピール、トリュフチョコ」 「エスプレッソ ダブル」
酸味のある冷たい「トマトのジェルスープ」のアミューズで食欲を刺激し、昼餐が始まる。旬の時期にはまだ早い、「ワラサのカルパッチョ」の刺身の身は締まっていたが、脂の乗りが今一つに思えたのは残念である。「蟹身のリゾット」は芯の残し方に歯応の良さを感じ、米は甲殻類のソースと一体となって大変に美味であった。
真っ黒に焼かれた「地ハマグリの炭火焼き」は、大きな貝殻を給仕長がナイフで開くと、焼きたての芳ばしい磯の香りが広がった。味付けは海水だけの素朴な料理であるが実に美味しい。「磯魚のうらごしスープ」は磯魚の頭までも擂り潰して、その内臓も加えられている濃厚なスープで、塩加減も良く野趣に富んだ味わいである。これは本家ヌキテパのスープよりも上品で美味い。「イサキのソテー」は絶妙な塩加減で調理されており、シンプルだが奥深い味わいであった。
料理全体の印象は、ボリュームも十分であり、供された料理はどれも私の口には合い、美味しく感じられた。窓から見える相模湾の風景が、海の香りや潮の匂いで味付けされた、魚介フレンチに一層の興趣を添えている。シェフの気持ちが伝わってくる、海のほとりのフランス料理店である。
(お店の詳細)
フランス料理「ヴィラ デル ソル」
静岡県熱海市伊豆山759
TEL0557-80-2020
不定休 (要予約)
私達は「シェフおまかせ」の一万円コースと、お酒で、30,482円でした。