(イタリアン)エノテーカ・ピンキオーリ 東京店

「エノテーカ・ピンキオーリ 東京店」 ☆☆

 五年ほど前になるが「ゴージャスめし」(引兼憲史・倉田真由美)という漫画本が出版された。その本には十八店ほどの有名な料理店が風刺をきかせ紹介されていた。本日訪れた料理店も、華やかで贅沢なイメージしか浮かばないレストランである。連れと二人、ゴージャスな晩飯を期待して銀座にあるイタリア料理店「エノテーカ・ピンキオーリ」を訪問した。

 八月中旬の東京は、気温が連日三十度を超える油照りの夏だ。この時節ジャケットを着用するのはまこと億劫である。レストラン予約の当日、ドレスコードの有無を連れに確認してもらうと、カジュアルな装いで構わないと聞き及んで安堵した。件のレストランは、銀座五丁目のファッションビル「銀座コア」七階にある。四階にある香老舗「香十」は時々利用しているので、私には多少馴染みのあるビルだ。

 東京では最高級といわれるイタリアンを訪れた筈だが、このビルを利用する若者たちとエレベーターを共用するのには、いささかの抵抗を感じたが、七階で扉が開くと目の前には別世界が広がった。レストランは三百五十坪ほどのワンフロアーで形成され、エントランスで名前を告げると女性スタッフがダイニングルームへと案内してくれる。重厚で落ちついたラウンジは、ワイン貯蔵室を兼ねた十四メートルほどのトンネル通路を経て、ダイニングへと繋がっている。客に非日常なインパクトを与える、このレストランの仕掛け(内装演出)は十分に成功しているようにも思えた。

 アンティークな家具や調度品などで瀟洒に設えられたメインダイニングは、天井高もあり広々として、磨き抜かれたウッディーフロアなど、その居心地は良さそうに感じた。このレストランのディナーコースは、一万円、一万五千円、二万円などがあり、本日は「私達のスペシャリティー」という二万円のコース料理を予約しておいた。更に、このコースメニューに合わせて、選りすぐりのワインを用意するワインテイスティングコース(二万円・グラスワイン4杯)があるというので追加した。卓上のグラスにスプマンテが注がれて晩餐が始まる。本日供された料理はつぎのとおりだ。

 ストゥッツィキーノ「赤肉メロンのガスパチョ・ソーセージのカナッペ・玉葱ムースのカナッペ」

 アンティパスト①「エスプレッソコーヒーに漬け込んだフォアグラ 赤ワインのクロスティーノとイチジク」

 アンティパスト②「オマール海老とモッツァレラチーズのサラダ 桃とトマトのパッサート」

 魚料理「アワビのロースト、セロリのコンフィと赤ワインソースと共に」

 パスタ「アーティーチョークを詰め込んだタリアッレ 手長海老、ブラックオリーブとトマト和え」

 肉料理「宮城産古川牛ヒレ肉 旬野菜、エキストラヴァージンオリーブ油と共に蒸し煮 グリーンソースを添えて」

 「お好きなチーズをワゴンより」

 ドルチェ「デザートメニューよりお気に入りの一品を」

デザートはすべて連れに譲って、私は樽熟のグラッパ(二千五百円)を舐める。

 「自家製チョコレートとエスプレッソダブル」

料理全体の印象は、素材に拘ったという料理は、どれも満遍なく美味いものに思われたが、ずば抜けて美味しいインパクトのある料理などはなかった。食後はボリュームたっぷりのコース料理とも相俟って、まるでクラシックフレンチを食べた後の様に、私にはかなり重いものに感じられた。

入れ代りに四、五名の男性スタッフが応対したサービスレベルは、スタッフによりサービスのレベルに格段の差を感ずるものである。客に緊張が伝わってくるような不自然なサービスや、中には多少慇懃無礼な印象を受けたスタッフもいたが、メインのカメリエーレは大変に親切丁寧な御方であった。

料理に合わせて選りすぐりのワインを提供するはずの「ワインテイスティングコース」も、通り一遍にワインの銘柄などを説明するに止まり、さして料理に合ったワインを用意しているように思えなかった。数年前にフランス料理店『シェ松尾 松濤レストラン』で、シニアソムリエの方が料理に対し、まこと丁寧な補足説明をおこない、レクチャー選定してくれた頃合いの六種類のワインの味は、今でも忘れられないものがある。

そして『ジョエル・ロブション』の「同じ料理でも、意識して味わって頂けると全然違うはずです。だから私達は提供する料理を良く理解して、お客様に説明したい。」と熱く語った若いギャルソンの姿を思い出していた。本日の「エノテーカ・ピンキオーリ 東京店」は、料理やサービスなど、私は支払った勘定の額に見合う満足など、殆んど感じることが出来なかったように思えた。

 (お店の紹介)

イタリア料理「エノテーカ・ピンキオーリ」

東京都中央区銀座5-8-20 銀座コアビル7階

TEL 03-3289-8081

定休日 無休 (予約した方が望ましい)

私達は、「私達のスペシャリティー」の二万円コースに、「ワインテイスティングコース」二万円を組み合わせ、92,289円でした。

ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/

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(イタリアン)ラ・ピネータ

トラットリア 「ラ・ピネータ」 ☆☆☆☆

東急東横線を都立大学駅で降り、タクシーで目黒通りを越えて自由通りに入ると、建物の一階にイタリア国旗を掲げた「ラ・ピネータ」がある。最寄り駅から徒歩十数分というという情報もあったが、私にはかなり遠くに感じられ、やはりタクシーで向かわれた方が無難であろう。連休狭間の四月末日に、「気分はイタリアン」という連れと訪問した。

予約した午後六時の開店時間に合わせて扉を開けると、シェフとマダムの二人が私達を出迎えて下さった。小ぢんまりとした店内はシンプルな設えで、六卓ほどのテーブル席とカウンター席があり、そのキャパシティーは二十席ほどである。このホールから感じ取れる、どこか凛とした雰囲気を私は嫌いではない。

このレストランのディナーは、「おまかせコース」(六千五百円)とアラカルトがある。食前酒のスプマンテ(フェラーリ九百円)を舐めながら、マダムから説明を受け、本日はコース料理を注文した。

まずは「平田牧場三元豚のリエットとバゲット」が運ばれた。空いた小腹には有り難い一品である。リエットは渋谷の『ラ・ブランシュ』で供された「豚肉のリエット」にも勝る旨さに思えた。白ワインはマダムの薦めで「ガヴィ ディ ガヴィ」(八千円)を貰う。きりっと爽やかで控えめな味わいの酒は料理と良く合った。

前菜「パルマ産の生ハム、的鯛(マトウダイ)のカルパッチョ」

白豚の腿からつくられた生ハムは低塩分の上質なもので、風味と芳香が際立っている。マトウダイはヒラメやマダイ釣りの外道で随分と釣ったものだ。関東の釣り人には外道扱いされる的鯛も、ニュージーランドでは最高級魚というのは面白い。初めて食べるマトウダイの刺身は、身質は軟らかいが白身で美味しく感じられた。

パスタ「トマトとバジルのパスタ、ホワイトアスパラガスのリゾット」

パスタはピーチという手打ち太麺のものである。卵は使わず小麦粉、塩、水だけで作られている。太麺特有のもちっとした歯応えが堪らない。もっと食べたい誘惑に駆られ、ジエノバソースのピーチパスタを追加した。リゾットは絶妙に米の芯を残してある。米の歯応えの心地良さと、ホワイトアスパラのシャキシャキした食感の良さが、お互いの旨味を引き立てている。

 追加のパスタ「ジエノバソース ピーチパスタ」シェア(千五百円)

 ペースト状に調理されたバジルとチーズ、松の実などのソースが、手打ち太麺のピーチパスタと絡み、濃密なうまみが味わえる一皿である。

 セコンド「的鯛(マトウダイ)のグリル」

 私は評判の「鮮魚の網焼き」を、連れは肉料理「平牧三元豚のソテー」をチョイスした。付合せは、コールラビ、サンゴカリフラワー、ズッキーニ、絹サヤ、スナックエンドウ、キャベツ、蕪などだ。添えられた温野菜は大変に美味しく感じられたが、魚のグリルは平凡な味に思える。味見した連れの「豚のソテー」の方が旨く感じられた。

 ドルチェ「苺、黒糖アイス、ティラミス」 「エスプレッソダブル」

 食後酒は、私は樽熟成した琥珀色のグラッパ(バローロ千円)を、連れはレモンチェッタ(八百円)を嗜み締め括った。

 料理全体の印象は、六千五百円というコース価格に見合った、厳選された食材が提供されていたと思う。供された料理は非常に丁寧に作り上げられて、料理人の気持ちがこもったものである。それは高名なリストランテの料理にも引けを取らぬものと私には思えた。ホールを担当されたマダムのサービスは、つかず離れずという心地好いものであった。

商売で最も大切なことは「立地」である。このレストランは「地の不利」は否めないが、タクシーで向かうに足りる大きな魅力があると感じた。完全予約制で、シェフとマダムの二人が持て成してくれる、誠に居心地のよいレストランである。

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(イタリアン)サバティーニ・ディ・フィレンツェ

「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」 ☆☆☆☆

 大晦日は昨年同様に、新橋にある『京味』まで注文した御節料理を受け取りに出向いた。行路、銀座に立ち寄って昼の食事を取ることにする。本年最後の食べ歩きは、銀座五丁目ソニービル七階にあるイタリア料理店「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」を予約してある。この建物の地階には高名なフランス料理店『マキシム・ド・パリ』などもあるビルだ。

このリストランテは昭和五十五年に創業され、既にこの地で二十八年間も営業されている老舗だ。総料理長のバルディ氏は旬の素材を多用しながら、本場トスカーナ料理を提供してくれるという。「日本人の嗜好に合わせて味を変えたりはしない」という料理に対するシェフの姿勢にも興味がわいた。

レストランのエントランスは、絵柄の赤絨毯が敷かれた階段の向こうに、大壷の花器に沢山の生け花が飾られている。街では鳴り続いている冬の季節風が枯葉を転がしていたが、案内されたテーブル席は窓から暖かい陽光が射し込んでいた。数寄屋橋交差点を見晴らしながら食前酒のスプマンテを舐めていたら、師走の喧騒などは消え失せて別世界にいるような心持ちとなった。かつては年末年始も休まずに仕事をしたものだが、すっかり様変わりした穏やかな晦日である。瀟洒なホールのキャパシティーは六十席ほどで、にぎやかな妙齢のご婦人グループや家族連れ、カップル客など様々な方が食事を楽しまれていた。

ここのランチコースは四千円、四千八百円、七千円の三種類があり、後はアラカルトとなる。連れと相談してデザート二種がワゴンサービスで選べる「シェフ・バルディお薦め 季節のスペシャルランチ」(七千円)を注文した。本日供された料理はつぎのとおりだ。

一つ目の前菜「天使海老とアボガドのサラダ仕立てにアウロラソースを添えて」

アボガドやチコリの緑とミニトマトの赤など彩りも美しい一皿だ。ボイルされたニューカレドニア産のホワイトタイガーとの味の組み合わせも良い。グラスで白ワインを注文すると三種類のワイン(千円から千四百円)がワゴンで運ばれ、スタッフから丁寧な説明がある。

 二つ目の前菜「和牛生肉のカルパッチョ ルコラ菜とパルメザンチーズと共に」

 パスタ「北海道無添加ウニとフルーツトマト、バジリコのスパゲッティ」

トマトソースがベースのスパゲッティは、和えた粒ウニや添えられたフルーツトマトから甘味が強く感じられた。バジリコの一葉がアクセントとなり美味しい。この店の手打ちパスタも食べてみたくなり急ぎ追加した。

メイン「牛フィレ肉とフォアグラの重ね焼きステーキ」

グラスの赤ワインは四種類の中から「セッツァーナ」(二千円)を貰った。フォン・ド・ヴォーベースの肉料理のボリュームは適量に思えた。

 追加のパスタ「ポルチーニ茸の自家製手打ちパスタ」シェア(二千七百円)

塩味がベースの少し太目の手打ちパスタは、たっぷり盛られたポルチーニ茸の食感と相俟って大変に美味しい。心地好い歯応えと甘い香りや旨味が口中に広がった。

 ドルチェ「ワゴンよりお好みのデザート二種」

デザートのワゴンサービスは七~八種類のケーキが運ばれた。連れと相談してティラミス、苺のミルフィーユ、チョコレートケーキ、ブルーベリーのシフォンケーキの四種類をチョイスして切り分けてもらった。少しずつ味見し私はシフォンケーキが一番美味に感じられた。

 食後酒のグラッパは三種類の中から、樽熟成した琥珀色のグラッパ(二千円)を選び楽しんだ。エスプレッソのダブルで締めとなる。

フイレンツェの本店を真似て再現されたレトロな内装は、シャンデリアや高級家具などの装飾と相俟って燻し銀のような雰囲気を漂わせていた。ただダイニングルームの大きさに対しキャパシティーが過大すぎるようで、満席となり客がそばにいると圧迫感を受けたことは残念である。

料理全体の印象は、コース値段に見合った食材がふんだんに使用されており、味もボリュームも十分に満足できるものである。ホールスタッフのサービスは親切丁寧で快適な時間を過すことができたと思う。「サバティーニ・ディ・フィレンツェ」は一年の最後を締め括るに相応しいリストランテであった。

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(イタリアン)イル・リストランテ・ネッラ・ペルゴラ

「イル・リストランテ・ネッラ・ペルゴラ」 ☆☆☆☆

 ターミナル駅の新宿に到着すると鈍色だった空が崩れて雨になった。予約してあるレストランは最寄りの恵比寿駅から大分距離があるようで、これ幸いと新宿の街からタクシーを拾う。金曜日の夕暮れ、通りはそこかしこで渋滞し、ひどい混雑が予約時間を気にする私達を苛立たせた。

 目当ての店は広尾三丁目、駒沢通りに面した「イル・リストランテ・ネッラ・ペルゴラ」というイタリア料理店である。名前を告げるとエントランスから、ゆとりのあるダイニングルームへと案内される。その雰囲気やホール中央に飾られた洋風の生け花など、店主のセンスの良さが随所に窺えた。窓から臨むウッドフロアのテラスには雨にうたれた木々の緑がライトアップに映えている。ダイニングは六卓ほどのテーブルが頃合いに配置されており、その居心地は大変に良さそうに感じた。

 このレストランのディナーコースは、前菜、パスタ、メインなどの料理をそれぞれ数種類から選択するプリフィクスコース(七千円)と、おまかせコース(一万円)とがある。当日は、おまかせコースを予約しておいた。そのコースを予約するとエントランス脇の個室(二名~四名)も利用できるという事であったが、個室は既に先客で塞がってホールの利用となった。

 食前酒を私はスプマンテ(千二百円)を、連れはこの時季どのレストランでも定番であるような巨峰のカクテル(千三百円)を貰う。女性スタッフからコース料理は十分のボリュームがあるという説明があったのだが、健啖家な私達は食指が動いた「生海胆のパスタ」(二千八百円)も追加しシェアすることにした。白ワインは一万円の予算でソムリエにお任せして「レラ・ロッカ2005・ピエロパン」が供された。

 本日の料理はつぎのとおりである。

 「メロンのスープとチンタセネーゼ豚のパンチェッタ」

冷製の果肉入りメロンスープにパンチェッタ(塩漬けした豚バラ肉)の一片が入ったアミューズだ。

 「桜海老のクロスティーニ」

クロスティーニとは添えられたパンに具をのせる前菜のことである。桜海老の風味が際立っている。

 「サヨリのカルパッチョとキャビア」

このレストランの看板料理、鮮魚のカルパッチョは淡白で身が美しい細魚が使われた。すっきりとした味わいのカルパッチョで美味い。

 「ポルチーニ茸のトレネッテ サマートリフ風味」

トレネッテはソースがよく馴染む少し太めのロングパスタである。惜しげもなく黒トリフが散してある。

 「アマダイのポモドーロバジリコ」

この魚料理もこのレストランの看板料理である。ポモロードとはトマトのことだ。カラッとソテーされたアマダイの皮は鱗の一片までもパリッと仕上げられ、その身は瑞瑞しい逸品だ。

 「山形牛のタリアータ」

薄切りされたフィレンツェ風の牛肉の炭火焼だ。シンプルな調理であるが大変美味しく感じた。赤のグラスワイン(千二百円)と合わせる。

 「生海胆のパスタ」

新鮮な生海胆とトマトが盛られた、弾けるような爽やかなパスタである。

何時ものようにデザートの「ティラミス」は連れに譲って、樽で熟成された琥珀色のグラッパ(千五百円)を楽しんだ。そして何時ものようにエスプレッソコーヒーダブルで締めとなる。

イタリア料理にフランス料理の経験もあるという斎藤シェフの作り出す料理は、素材を大事にして丁寧に仕上げられている。しかし衒(てら)いを嫌いシンプルである印象を受けた。供された料理はどれも大変美味しく思われる。

ゆとりのある垢抜けたホールで、上々の出来の料理とサービスを提供してくれるこのレストランは、すべてに「そつが無い」ように感じられた。「イル・リストランテ・ネッラ・ペルゴラ」は快適な楽しい時間を過させてくれるリストランテである。

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(イタリアン)トルッキオ

 「トルッキオ」 ☆☆☆☆☆

 東京メトロ東西線の九段下駅で降りるとまだ五時半だというのに、いつのまにか陽は沈んで九段の街は薄暗いベールに包まれている。北の丸公園から高塀に囲まれた靖国神社の辺りを十分ほども歩いていくと、イタリア国旗を掲げた「トルッキオ」に辿り着くことができる。目指す建物の地階にそのレストランはあった。エントランスを抜けた細長いホールがダイニングルームとなっており、私達は一番奥のテーブル席へと案内される。

 このレストランは、出盛りの魚介類や蔬菜(そさい)を客の目前まで供して説明し、スタッフと相談しながら調理法を決めていく様式を採用している。食前酒のグラススプマンテ(フェラーリ千五百円)を舐めていると、白磁の四角形や楕円形の皿に盛られた本日の食材が運ばれてくる。魚介類の楕円皿には、カサゴ、クロムツ、ノドグロ、メジナ、アカイカ、アカザエビなどが並べられ、蔬菜類の皿には、ちりめんキャベツ、ナス、ピーマン、アスパラガス、インゲン、フルーツトマト、イチジクなどが彩な色に盛られていた。

この店のディナーには、おまかせコース(六千三百円)もあるのだが、今日は目前の食材から食べたいものを選択してアラカルトとすることにした。親切な髭面の調理スタッフと相談し、わくわくしながら料理を決定していく。すべてを釣り上げたことのある魚種からは、躊躇なく赤ムツ(ノドグロ)を選んで、奉書焼き風に調理してもらうことにした。見るからに美味そうな特大の赤座エビはトマトソースのパスタに仕上げてもらう。新鮮なホワイトアスパラは素材本来の味を生かしたシンプルなソテーとした。イチジクはチーズと生ハムに添えてもらう。白ワインは、ぱっちりした目をしているソムリエンヌにお任せして「ゴルゴ・トンド グリッロ・シャルドネ」(八千二百円)を貰った。

本日供された料理はつぎのとおりだ。

前菜①「トマトとモッツレラチーズと生ハムのサラダ イチジク添え」(千四百三十円)

前菜②「ホワイトアスパラのソテー バルサミコ酢のソース」(千六百円)シェア

パスタ①「赤座海老のパスタ トマトソース」(五千九百円)シェア

スタッフがテーブル前に、円筒状のパスタマシン「トルキオ」を持参する。そのマシンに固めのパスタ生地を入れてビゴリ(太めのパスタ)を押し出して作ってくれる。太くこしのある手打ちパスタは、弾力のある赤座エビの甘い身やまったりとしたトマトソースと絡まって、食べこむほど美味さが増していく逸品に感じられた。

 パスタ②「ちりめんキャベツとカラスミのパスタ」(千九百七十円)シェア

ちりめんキャベツ、ジャガイモと白身の魚などの具材のスパゲッティに、カラスミのパウダーの塩気がアクセントとなっている。

 魚料理「赤ムツと野菜の奉書焼き」(七千六百円)シェア

赤ムツと旬の茸や野菜などを奉書に包んで蒸し焼きにしている。包み紙を破ると芳ばしい香りが立ち上がった。美味な赤ムツに、シメジ、椎茸、白舞茸、エリンギなどの茸類と、グリーンアスパラ、キヌサヤ、モロッコインゲン、四角豆などの野菜の旨みが加わった瑞瑞しい絶品だ。

 パスタ③「カルボナーラ」(千八百円)シェア

好物であるカルボナーラも食べてみたくなり追加した。卵黄とチーズの風味が際立った出来ばえのシンプルカルボナーラである。ベーコンの塩味がやや強めに感じられたが、グラスの赤ワイン(八百四十円)とはよく合った。

 ドルチェ「パンナコッタ」は連れに進呈して、ほのかな琥珀色に染まった樽熟成のグラッパを楽しんだ。そしてエスプレッソコーヒーダブルで締めとなる。

 このレストランの料理は私の口に合って、どれも大層美味しく感じられた。ホールスタッフのサービスレベルも高く、寛いだ雰囲気の中、楽しい夕餉の時間を過すことができたと思う。次に訪れるときには、常時七種類ほどもあるという評判の手打ちパスタを予約して、存分に味わってみたいものだ。「トルッキオ」とは、人を少し幸せにしてくれるイタリア料理店である。

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(イタリアン)カノビアーノ

「リストランテ カノビアーノ」☆☆☆☆

 住まい近くにある栗の樹は毎年六月の頃に、白く長く見える髭のような柔らかな花を咲かせる。ほとんど手入れもされない荒れた栗林であるが、十月の今は岐枝の裂けた毬(いが)の中に、艶やかな赤茶色の秋の実りを見つけることができる。いつのまにか連れが「栗のニョッキ」に拘る季節となっていた。

 連れがレストランの予約がとれたと言う。くだんのレストランは彼女のリクエストに応じて「栗のソースのニョッキ」を提供してくれるそうだ。十月の初旬、代官山にあるイタリア料理店「カノビアーノ」を訪れてみた。

 東急東横線の代官山駅から歩いて五分ほど、瀟洒なビルの地下にそのレストランはあった。モダンな店内は、厨房を取り囲むようにL字型のホールとなっており、案内されたのは一番奥にあるテーブル席である。まだ先客は一組だけのようで、寛いで食事が楽しめそうだ。

 食前酒はグラススプマンテ(千二百円)、連れは巨峰のカクテル(千五百円)を頼んだ。このレストランのディナーコースは六千五百円と八千円とがある。当日はリクエストした「栗のソースのニョッキ」(二千四百円)に、八千円のコース料理を注文することにした。白ワインは「コルネル ゲヴェルツトラミナール」(一万円)を貰う。本日供された料理はつぎのとおりだ。

 前菜「しま海老とカラスミの冷製カッペリーニ」

冷されたフォークと共に運ばれた店のスペシャリテは、細めの麺に絡まった酸味のきいたトマトソースの風味が広がる。まったりとしたシマエビの甘みと、散らされたカラスミがアクセントとなった逸品だ。

 本日の前菜「ホロホロ鳥の胸肉と野菜のサラダ」

サラダ材料は、カリフラワー、ブロッコリー、フルーツトマト、スナックエンドウ、百合根、オクラ、ベビーリーフなど多種に亘るものだ。

 温かいオードブル「駿河湾産の赤座海老のグリル」

添えられた野菜は、九条葱、ポルチーニ茸、キャベツ、金針菜など。赤座海老とポルチーニ茸の相性のよさが際立った一品と感じられた。

 おすすめのパスタ「子持ち鮎のスパゲッティーニ」

ソテーされた鮎の切り身は麺と絡め、鮎卵はソースに混ぜてあった。しろ菜、九条葱、蕪などの野菜も美味い。

 追加のパスタ「愛媛県産栗のクリームソースのニョッキ」

栗のクリームソースには、風味豊かにざっくりと割られた和栗が入る。滑らかなニョッキは、名店『アッカ』のニョッキと比べても遜色のない出来栄えに思える。

 魚料理「沼津港産イサキのポワレ」

京里芋のポタージュの上に盛られたイサキのポワレと野菜。白舞茸、壬生菜、牛蒡などの野菜の味わいは絶品だ。

 肉料理「国産仔牛ロース肉のポワレ ジロール茸のソース」

グラスの赤ワイン(千五百円)と合わせた。添えられた野菜は、千両茄子、ウイキョウ、マコモ茸、ベビーコーン、京ほうれん草など。

 「黒胡麻のティラミス」などのドルチェは連れに譲って、食後酒のグラッパ(千六百円)を貰う。このレストランの素材本来の風味を生かした優しい味わいの料理は、どれも大変美味しく思われた。ニンニク、唐辛子、バターを使用しないことにより、野菜の繊細な旨みが一層際立ったものに感じられる。担当された男性スタッフのサービスレベルもまずまずであった。本日は一点の妥協もないカノビアーノスタイルと称する料理に、ワインもすすんで楽しい夕餉の時を過すことができた。

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(イタリアン)グットドール・クラッティーニ

「グットドール・クラッティーニ」 ☆☆☆☆

 七月に入り桃の美味しい季節となった。「栗、芋、南瓜」に目がない連れは、「桃」も大好物である。二十年近くも前から「桃のパスタ」を提供してきた元祖のイタリア料理店がある。そんな夏の涼麺を味わいに丸の内にある「グットドール・クラッティーニ」を訪れてみた。汗ばむほどの陽気となった土曜日の夕暮れ、東京駅から人通りもまばらなオフィス街を十分ほど歩いていくと、くだんのレストランがある。

 カジュアルなデザインのダイニングルームのキャパシティーは三十席ほどである。全席禁煙はとても有り難いのだが、案内された二人席は隣席との間隔が狭く圧迫感を受ける。

 この店のディナーは、コース料理はなく全てアラカルトとなる。担当の女性スタッフに私達が健啖家である旨を伝え、注文数について尋ねると「前菜二皿、パスタ二皿、主菜一皿を二人でシェアすれば十二分に満足する」との話である。グリーンとブラックのオリーブを摘まみシャンパーニュ(千五百円)を舐めながら、連れと相談してメニューを決めた。

 白のグラスワイン(九百円から)は五種類の銘柄が揃えられており、辛口のしっかりとした味わいのワイン(千二百円)を貰った。本日供された料理はつぎのとおりだ。

 アミューズの「コーンポタージュ」は、かなり濃厚で粘りが強くコーンの甘みに山葵がアクセントとなっている。「リコッタチーズとオレンジのパン」は、器に盛られた「ほろほろ鶏のリエット」と共に運ばれた。

 アンティパスト(前菜)①「冷たい桃のスパゲッティーニ」(千三百円)シェア

酸味のきいたトマトソースを細めのスパゲティーニに絡めてある。涼麺の具は、たっぷり一個分の旬の白桃である。噛みしめてみるとトマトソースの酸味、ほのかな桃の甘み、白胡椒の刺激、添えられた紫蘇の爽やかさなどが絡み合い味覚をそそる逸品であった。

 アンティパスト(前菜)②「金華鯖のマリネ、アボガド添え」(千四百円)シェア

宮城金華山沖の脂ののった鯖が、毎朝届けられるという有機無農薬栽培の野菜と共に供された。たちまち日本酒が恋しくなり、富山の淡麗辛口の酒「満寿泉(ますいずみ)大吟醸雄町(おまち)」(グラス千円)を貰う。

 パスタ①「とっておき生うにのスパゲッティーニ」(二千円)シェア

生ウニの甘さに赤唐辛子のピリッとした辛さが際立った一皿だ。

 パスタ②「赤海老とアランチャ(オレンジ)のフジッリ」(千六百円)シェア

魚介類の出汁をベースにした温かいフジッリ(ネジのようなペンネ)の具は、車海老とオレンジやトマト、オレンジとトマトの風味が素晴らしい。唐辛子で辛さをきかせてある。

 まだ他のパスタも味見したくなり通年のスペシャルメニューから、パスタ③「キャベツ畑のスパゲッティーニ」(千二百円)シェアを追加した。たっぷりのキャベツの具に、これも唐辛子で辛さをきかせてあった。

 口直し「グレープフルーツと山葵のシャーベット」

 セコンド(主菜)「鴨ロースのあぶり焼き」(二千四百円)シェア

野菜も十分に添えられた鴨ロースのあぶり焼きは大変に美味しく感じられた。スタッフお勧めの赤のグラスワインと合わせてみる。食後の飲み物はエスプレッソを貰う。

 料理全体の印象は、「パスタが一番得意。」という倉谷義成シェフの言葉とおり、鼓舞して作り上げた四種類のパスタは、どれもが塩味や香辛料をきかせた、しっかりとした味わいの料理であり美味しく感じられた。和食からイタリアンに転じたというシェフの経験も、運ばれた料理のそこかしこに生かされていたように思える。

スタッフのサービスレベルも先ず先ずと感じたが、二人席のテーブルは狭苦しい上に、隣席との空間に余裕もなく、ゆったりと寛いで食事が楽しめなかった事が誠に残念である。連れが秋には「栗のニョッキ」があると楽しみにしているので、実りの秋の頃に再訪してみたいと思う。

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(イタリアン)エノテカ・ノリーオ

「エノテカ・ノリーオ」 ☆☆

 新宿へと向かう小田急線特急ロマンスカーの車中で、一人微睡んでいると、隣席にいた数名の老年のご婦人がグルメ談義に花を咲かせていた。婦人達の饒舌は時折私の癇に障るものであったが、会話の中に度々登場した「四谷のエノテカ・ノリーオ」というレストラン名は十分記憶に残るものであった。

 五月下旬、日曜休みの昼下がりに「パスタが食べたい。」と言う連れに促されてレストランブックのページを捲っていたら、くだんのレストランが目に留まって予約を入れてみた。

 東京メトロ丸ノ内線四谷三丁目駅の階段を昇ると、外はまだ暮れそうもない黄昏時である。地図を頼りにどこかひっそりとした街中を七、八分も歩いていくと目的のリストランテ「エノテカ・ノリーオ」に辿り着くことができる。大通りから横へ入った静かな住宅街の中にレストランはあり、その真向かいは味気もない全天候型の小学校のグランドとなっている。

 二階建ての白い建物は一階がウェイティングバー、二階がレストランの設えのようで、段だらの石段を上がり一番乗りで大窓に面したホール奥の席へと案内された。ホワイトを基調としたダイニングルームのキャパシティーは二十席ほどであり、二階エントランス近くには十席ほどの半個室もあるようだ。座席の間隔はゆったりと取られており、寛いで食事を楽しめそうである。そして店内は全席が禁煙で食に対する店主の拘りも感ずることができる。

この店の料理はプリフィクスのコース料理のみであり、夜は六千円の一コースのみとなる。五月、ある日のメニューは、四種類の前菜、三種類の温野菜、四種類のパスタ、四種類の魚肉料理からの選択となる。十五種類からのプリフィクスで、追加料金が設けられているのは僅か二種類(+六百円)のみである。コース料金を廉価としながら、プリフィクスで巧みに高額な追加料金を設定しているレストランも多いが、ここは良心的なリストランテのようだ。

 食前酒のフェラーリのスプマンテ(千円)を飲みながら、連れと相談しプリフィクスの料理を決定した。店のグラスワイン(千円~二千円)は赤白とも四種類の銘柄を揃えてあり、様々な味わいのイタリアワインを楽しむことができる。

 本日供された料理はつぎのとおりだ。

(前菜)吉田牧場のフレッシュモッツレラとリコッタのサラダ

(温前菜)ホワイトアスパラのソテー ポーチドエッグ添え ペコリーノ風味のソース

(パスタ)ムール貝とフレッシュトマトのパッパルデッレ 生ウニ添え(+六百円)

(肉料理)短角和牛サーロインのタリアータ 赤ワインソース(+六百円)

(ドルチェ、カッフェ)ドルチェは連れに譲って、エスプレッソのみ。食後酒はグラッパ(八百円)を貰う。

料理全体の印象は、個々の料理の説明や評価は敢えて書かないが、それらは「旨くもなければ、不味くもない。」といったもので、私にはどれも極めて凡庸な味に感じられ、特筆すべきものはなにもないように思えた。ホールを担当されたマダムと男性スタッフは親切丁寧で、サービスレベルは良いように感じられる。

顧みて思えば「吉田牧場のチーズや契約農家の野菜など素材に拘った、季節感あるイタリアンは、すごく美味しい。」と評判を伺って訪問した。微睡みの車中で聞いた婦人たちのグルメ談義など、このレストランへの事前の期待が高すぎたのかも知れない。私にとって本日供された料理は、誠に期待はずれのものであり残念であった。

ホームページの「東京食道楽記(極上の味を求めて)」では、男女二人が、それぞれの視点から、食べ歩きの原稿を書き上げております。興味のある方はご覧になってください。
http://www18.ocn.ne.jp/~gokujyou/

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(イタリアン)イル ギオットーネ 丸の内

「イル ギオットーネ 丸の内」 ☆☆

久方振りにイタリア料理でも食べに行きたいと思った。レストランの選択と予約を連れに任せたら、あくる日、早々に店の予約が取れたという。名前を尋ねると「イル ギオットーネ 丸の内」というイタリアンレストランである。2005年秋に京都から東京丸の内に出店され、こちらの店も予約が取りづらいとの噂である。「予約は三週間先」との情報もあったのだが、何故だか二日前に予約を取ることができたようだ。

ターミナルの東京駅から徒歩2~3分という好立地に、そのレストランはある。今風なデザインのエントランス前には本日満席との看板が掲げられており、さすが評判、流行りの料理店である。アイボリーを基調とし天井が高い室内はイタリアンレストランに似合わしい開放的な雰囲気がある。二部屋の個室を設えたホールのキャパシティーは四十席ほどだ。連れと厨房近くの長椅子席に案内された。その席は大柱が衝立の役割となって、寛いで食事が楽しめそうである。

この店の夜のメニューは、七千五百円と一万円のコース料理のみでありアラカルトは無い。当日は一万円のおまかせコースを予約しておいた。食前酒のスプマンテを飲みながら料理を待った。ワインは一万円ほどの予算で「軽やかな白」をソムリエにお任せし、メロイ・コッリ・オリエンターリというイタリアの甘口白ワインを頂いた。

本日供された料理は下記のとおりだ。

①前菜1「ウドと青海苔のスープ」

塩味ベースの茶碗蒸し仕立で、上に生ウニがのる。磯臭い風味が私の口には合わない味だ。デザインのみに拘り無意味に曲げられたスプーンは食べづらい。

オリーブオイルとともに四種類のパン(胡桃、オリーブ、フォカッチャ、フランスパン)

が供された。オリーブオイルはベローナ産とドライトマトを漬け込んだシチリア産の二種類である。

②前菜2「新ジャガイモのスフレ マスカルポーネチーズのムース アワビ クレソンのソース」

摩り下ろし焼き上げられたジャガイモは、ふわりと膨らんでいる。フレッシュチーズムースのやや濃厚な風味との相性は良い。クレソンソースとアワビの味わいは、まあまあというところだ。

③前菜3「ヒラメ、トマト、ウイキョウのサラダ仕立て キャビア添え」

ウイキョウを素材とした緑色のジュレとソブレ、透明板状のトマトゼリーの輝きを纏った鮮やかな一品だ。歯応えのあるヒラメの食感にトマトの酸味が美味しく感じられた。

④前菜4「ホワイトアスパラのパンナコッタ 蟹肉とグリーンアスパラソース」

食感を出そうとホワイトアスパラの薄切りも添えてある。何かぼやけたような味である。

 ⑤パスタ1「アマダイと菜の花のバベッティーユ」

木の芽の香りのするパスタだ。塩味が濃すぎる味付けで、揚げて散らされたアマダイの皮は生臭く歯応えも悪い。魚の骨からとった出汁を用いたという、このパスタは美味しく感じられない。

⑥パスタ2「エンドウ豆のニョッキ」

イベリコ豚の生ハムがのせられ、エンドウ豆の微塵切りが散らされている。バターソースと生ハムの塩味が強い。しょっぱ過ぎだ。

⑦フォアグラ料理「玉葱のプチィーノ フォアグラ 新玉葱の蒸し焼き」

インパクトの感じられない、ごく普通の味。

⑧肉料理「子牛のタリアータ」

三色のソースで彩られた炭火焼きの薄切り肉。白インゲンやキャベツが添えられラルドという豚脂がのせられている。この料理は極めて味のバランスが悪い、味付けはしつこくて塩味も濃い。半分も食べ切れずに残してしまった。

⑨口直し「小金ミカンのシャーベット」

⑩七種類の中から選ぶドルチェ「ティラミス」

⑪「エスプレッソ ダブル」

 料理全体の印象は、このレストランの料理は塩味が濃すぎるものが多く、しょっぱくて私の口には合わないものだ。そして供された料理は冷たいものが多いような感じもした。

若い男女が揃ったホールのサービススタッフは、経験不足は否めないが、真摯さが伝わってくる接客態度には好感がもてた。

「京都イタリアン」を標榜するこの店では、京野菜に拘り毎日空輸された素材を主体に料理されているという。しかし肝心の味つけは、なおざりにされているような印象を受けた。「その土地でとれた旬な食材で調理する」というコンセプトなど、作り上げられたイメージ戦略だけでは、店の評判はいつまでも続きはしない。形だけではない「京都イタリアン」の名に見合った繊細な味わいの料理を提供して頂きたいと思う。

店名の由来は「食欲の旺盛な人」という意味らしいが、その晩、私の食欲は旺盛とはならなかったようである。

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(イタリアン)ピオラ

「ピオラ」 ☆☆

白金に美味しい手打ちパスタを供してくれるリストランテがあると聞いた。ヴァルテル・ダル・コル氏というイタリア人がオーナーシェフを務められる店である。シェフは嘗てイタリア大統領訪日時の晩餐会で料理を担当されたという凄腕の料理人だ。

タクシーを降り少し歩くとイタリア国旗を掲げたレストランが見える。この店は一階がウェイティングバー、二階がメインダイニングとなっている。エントランスから男性スタッフに案内され二階に上がるとヴァルテル氏が出迎えてくれた。ホール中央にはクリスマスツリーが置かれ、店内のそこかしこにイタリアの装飾品が飾られて、誠に家庭的な雰囲気のする店である。そのキャパシティーは三十席ほどであるが、席の間隔は狭く天井も低いので幾分か圧迫感がある。ホールのサービスは若い男女二名が担当される。

私達が最初の客の為かオーナーシェフは席に付き切りで、木箱に入った白トリュフや玉子などの食材を示して微細な説明をしてくれる。しかしイタリア語に片言の英語と日本語を取り混ぜ、捲くし立てるように話しをされたのには少し圧倒された。夜の「シェフおまかせコース」は一万円から一万五千円、後はアラカルトとなる。当日はシェフのお勧めで一万五千円のコースを注文してみた。パスタは三種類との事であったが連れが「ニョッキ」もリクエストすると快く変更に応じてくれた。

コペルト(お通し)のローズマリーとチーズの「クリスピーパン」八百円を齧りながら食前酒の「スプマンテ」千円を飲んで料理を待った。

先ずは小フライパンの「フライド・エッグ」が供された。シェフが目前にて白トリュフをスライサーで薄く削り目玉焼きの上に、惜しげなくたっぷりと散らしてくれる。素晴らしい香りが広がった。三種類のチーズとトリュフと目玉焼きの相性は抜群である。ワインは一万円の予算で「ストラビスモ・ディ・ヴェネーレ」というフルーティーだが酸味も強いイタリアの白ワインを貰った。

「四種類の前菜盛り合わせ」は、ほろ苦い味のイタリアのサラダ菜「ラディッキョのソテー」、「ポレンタ」はトウモロコシの粉を練った餅、「スペックハム・生ハム・サラミ」、モッツレラチーズ、トマト、バジルの「カプレーゼ」など。何れもワインとよく合う。

大きなバスケットに盛られた自家製パンも運ばれる。六種類ほどのパンの味は上質なものである。

「三種類のパスタとリゾット」は、「イカ墨を練りこんだフィットチーネ タラバ蟹とトマト和え」、「ガルガネッリ 海胆と白魚」、彩も鮮やかな「四色のニョッキ ゴルゴンゾーラチーズ」はジャガイモの白色、トマトの赤色、サフランの黄色、ホウレン草の緑である。

シェフがハンドメイドだと強調していたパスタは、歯応えもあり先ず先ず美味しくは感じられた。「ポルチーニ茸のリゾット」は私には塩気が強すぎる。

ホールは四組ほどの客達で盛況となりヴァルテル氏は接客で忙しい。というよりも殆どホールにおられた。店の厨房には四名の料理人がいるようで、このシェフはプロデュースをされているようだ。

魚料理「白身魚のホイル焼き」カサゴ、ムール貝、浅蜊などと、ブロッコリー、蕪、ズッキーニ、トマトなどの野菜のホイル焼き。コース全体でバランスを取っているのか、魚料理は軽い感じのものであった。料理を供するパフォーマンスは見事であったが、その味は凡庸である。

肉料理「タリアータ」子牛肉を固まりで焼いて薄切りにしたもの。ルッコラ、ズッキーニが添えられバルサミコ酢で味付けしてあった。赤の「グラスワイン」九百円を合わせた。

ドルチェ「柿のババロワ、ミックスベリーのジェラート、アップルパイ、ティラミス」

「エスプレッソ ダブル」七百円、食後酒「グラッパ」千八百円

料理全体の印象は、料理のボリュームは十二分である。強めに感じられる味付けはインパクトもあったが、私には料理全体の塩気が少し強すぎるように思えた。男女二名のホールスタッフは親切丁寧でそのサービスレベルは高い。

「季節の食材を多用したイタリア本場の味」という店のコンセプトに対しては、料理は平凡なレベルのものが多かったように思う。ここのパスタも悪くはないが、嗜好の違いか、私は高名な日本人シェフ達が作られる上品な味のパスタの方が遥かに美味しいように思える。ここの料理は、濃い味付けの料理を好まれる方々にはお勧めできる料理店であろう。

オーナーシェフのサービスに関しては、私達がホールスタッフと話していても、イタリア人の気質なのかスタッフを押しのけて、度々話に割り込んでこられたのには辟易とした。少しでも売り上げを増やしたいという思惑が伝わってくる。ところが私達が食事を終えると、纏わり付いていたシェフはどこかに立ち去り、帰りに見送ってくれたのは、件(くだん)のスタッフ氏一人である。あまりに現金な態度に一寸呆れた。シェフは商売熱心な凄腕の方であった。

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